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【勝負師たちの系譜】記録係の思い出(1) 「君、見てたよな」…反則がらみの対局に戦々恐々 (1/2ページ)

 記録係とは対局者の横にいて、将棋がどう進行したかの記録をつけるのと同時に、対局者が持ち時間を使い切れば、秒を読む仕事をする人のことである。

 これがテレビ将棋だと、1時間足らずで終わってしまうが、持ち時間が一人6時間の順位戦だと、朝10時に開始して、2度の休憩(昼と夕食)を挟むと、終局が0時を回ることも多々ある。

 今でこそ6時間の対局は順位戦だけだが、私が初めて記録を取った1970年頃は、ほとんどの対局が6時間だったから、記録を取れば毎局深夜までの労働だった。

 最初は一手に1時間も考えることがあるのが信じられず「この手、どれだけ使った?」と聞かれた私は思わず「1時間も考えています」と「も」をつけて怒られたことがあった。

 もっともかなり慣れた頃、終盤でハッキリ負けなのに、1時間考えていた棋士に局後「何を考えていらしたのですか」と聞いたら、「バカ、指したらすぐ終わってしまうだろう」との答えを聞いて、この人の記録は取りたくないと思ったことがある。

 そして強い人は、40~60手の間に長考することも自然に教わった。

 記録係の一番辛い時間は、昼食休憩後の1~2時間後で、必ず眠くなった。すると意地の悪い棋士は決まって、記録がウトウトしている間に音もなく指し、目が覚めた瞬間、盤面が動いているのに気付いた記録が慌てるのを楽しんでいた。

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