経営再建問題に揺れる日本航空(JAL)。ナショナルフラッグキャリアーの凋落については、さまざまな要因が挙げられるが、元JAL経営企画室副室長で航空評論家の楠見光弘氏は「販売力の低下」が経営悪化の一因と指摘。回復の切り札として「IT至上主義からアナログへの原点回帰」を唱えた。そのココロは−。
「JALの再建は、突き詰めれば単純。唯一にして最大の商品である『座席』をとことん売ればよいのです。ところが、いまはそれがまったくできていない」
こう断言する楠見氏は、ワシントン支店長や国際部長なども歴任したJALのOB。同氏は、座席販売の実情が分からない幹部が経営権を握ったことがJAL迷走の発端という。
「JALは欧米系航空会社の二番せんじでチケット販売のIT化に多額の資金を投じる一方、マンパワーで座席を販売していた旅行代理店への手数料をカットしました。その結果、代理店の担当者と丁々発止で交渉できるベテラン社員もいなくなった。日本での航空座席の販売は、機材やシーズン、団体受注状況など、さまざまな要素を勘案し、オーバーブック(超過予約)を恐れずに最後の1席まで売り切る職人技が求められる。画一的なIT化で済むものではないのです」
楠見氏とは別のJAL元支店長もやはり、販売力の低下が凋落の原因とみている。元支店長が米国方面の料金設定を担当していた十数年前、同路線でのJALのロードファクター(座席占有率)は90%超だったが、現在は最下位。その黄金時代を支えていたのは全国の旅行代理店で、総座席の8割以上を代理店が売り上げていたという。
ところが、JALはIT化と経費節減の名目で代理店を次々カット。現在、代理店の座席売り上げは3割程度まで低下しているという。コミッション(手数料)は百数十億円削減されたが、逆にシステム管理費やこれまで代理店が抱えていた顧客のクレームや広告関連の経費が膨らみ、逆に数百億円の支出を迫られることになったとみる。
「燃油高騰や高い人件費、旅行市場の冷え込みなども経営悪化の要因ではあります。しかし最大の問題は座席を売る力を失ったことでしょう。現在のJAL社内に自力で座席を売り切れる社員は皆無です。赤字路線からの撤退などの再建策は、本質的な解決策ではないのです」(元支店長)
都内の中堅旅行代理店社長も「最近は代理店への卸売価格よりサイトでの直販価格の方が安いことが多い。強い販売力で市場価格を安定させてきた代理店を排除した結果、投げ売り同然の価格でしか販売できなくなっている。本末転倒ですよ」と語る。
これらの指摘に対し、JAL広報部は「代理店へのコミッションカットやIT化による自社販売は相当の費用削減効果があり、世界のほとんどの航空会社もゼロコミッションに移行する流れの中の経営判断です」と話している。
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