いよいよ花粉症シーズン到来。今年は例年に比べてスギ花粉の飛散量が少ないと予測されているが、最近は1年中なんらかの花粉に悩まされている「多重花粉症」の患者が増加しているという。その実態と治療法について「鼻すっきりの健康学 花粉症に負けない知識と『粘膜1本注射療法』」(講談社)を著した耳鼻咽喉科専門アレジオ銀座クリニックの呉孟達院長に聞いた。
「ここ数年、スギ花粉症の人が別の抗原(アレルギーの原因)による症状を訴えるケースが増えています」と呉院長は指摘する。
抗原は血液検査によって特定できる。近年はスギ、ヒノキといった春の花粉だけでなく、夏のカモガヤ、秋のブタクサなどにより、一年中アレルギーに悩まされている人が増加。同クリニックの検査では患者の6割にも上る。また、花粉だけでなく、ハウスダスト、ダニ、カビ、ゴキブリ、動物上皮など、日常生活に存在する抗原でのアレルギーを合併している人も多い。
アレルギー患者の急増は、一般的に清潔志向による免疫力の変化や腸内環境の変化などが指摘されているが、呉院長は、鼻の粘膜に着目した。
「スギ花粉症で炎症を起こして腫れた鼻の粘膜は、過敏な状態になります。市販薬で一時的に症状を弱めても、腫れた粘膜の炎症は続き、免疫反応は高いまま。その結果、スギ花粉以外の抗原に対しても、アレルギー反応を起こしやすくなっているのです」
スギ花粉症を引き金に次々と起こるアレルギーの連鎖。呉院長は、それを断ち切るために、愛知医科大学医学部時代に研究を重ねたという。
従来のスギ花粉の抗原をあらかじめ注入する減感作療法では、スギ花粉症は抑えられても、多重花粉症の人には不向き。
重症の花粉症患者には鼻の粘膜を焼き切るレーザー療法が行われるが、これは鼻の粘膜の損傷が激しく、鼻の防衛機能が低下してしまう。呉院長は、試行錯誤を繰り返すうちに、2003年、同医学部准教授時代に鼻の粘膜の炎症を抑える新たな治療法アレジオ療法(粘膜注射療法)を確立したという。
「腫れた鼻の粘膜に組織の収縮効果を持つ薬を1回注射することで、大切な粘膜表面をほとんど傷つけずに炎症を抑えます。250例以上の治療実績がありますが、副作用もなく、有効率は100%です」
現在も、愛知医科大学客員教授として、先端医学の研究を進める呉院長は、「多重花粉症を防ぐためには、何よりもスギ花粉症を放置しないことが大切」という。

