カタール・ドーハで開かれていたワシントン条約締約国会議は日本時間18日夜、第1委員会で大西洋・地中海産クロマグロ(本マグロ)の禁輸案を否決した。最大の輸入国である日本にとって、大どんでん返しの勝利。その背景には中国による禁輸反対票の掘り起こしがあったとされる。世界経済を牽引する中国が、マグロでも大活躍した格好だ。
同委員会では、即時禁輸を提案するモナコ案、禁輸実施時期を来年5月からとするEU(欧州連合)修正案が採決され、ともに反対が過半数を占めた。この結果は24日に始まる全体会合に報告される。
全体会合では、投票国の3分の1以上が求めれば再採決が行われるが、肝心のモナコが再採決を求めない方針である上、仮に再採決を実施したとしても、3分の2以上の禁輸賛成票が集まらないと委員会の決定が覆らないため、禁輸回避はほぼ確定したといえる。
日本政府は「日本の根回しがしっかりできていた」(外務省幹部)と満足げだが、禁輸反対票が予想以上に集まったことには驚いた様子。
実はこの大どんでん返しを演出したのは、ほかでもない中国だ。禁輸反対の立場に回ったのは、アフリカを中心とした途上国。中国は、天然資源獲得や国際舞台での地位向上のため、アフリカ各国への援助を通じて関係を強化しており、影響力は大きい。
現在、クロマグロの輸入では日本が最大となっているが、所得水準が向上し、富裕層が増えている中国でもマグロの消費量が急拡大している。禁輸となれば中国も大きな影響を受けるため、禁輸への反対をアフリカ各国を中心に働きかけたもようだ。
さらに、今回の会議では、クロマグロ以外にもフカヒレやかまぼこの材料になるサメの取引規制案も提出されている。フカヒレは中華料理には欠かせず、中国は、クロマグロが禁輸になれば多くの水産資源で禁輸の流れが強まることを懸念。そんなこともあって、本気でクロマグロ禁輸反対に動いたようだ。
大手寿司チェーン店の反応はどうか。「回転寿司 海鮮三崎港」「すし三崎丸」を運営する京樽(東京・人形町)の担当者に聞いた。
−−禁輸否決の一報を聞いた感想は
「実際にマグロを取り扱う卸業者にとっては死活問題。私どもも状況を注視しておりました。ひとまずはホッとしております」
−−もし禁輸が決まっていたら…
「仮に禁輸が決まっても、すぐにクロマグロが提供できなくなるわけではありませんでしたから…。当面は、しっかり対応できる態勢を整えておりました」
−−多くの寿司愛好家もホッとしています
「輸入の可否は国全体の問題で、長期的な課題。今回の1件だけでは、とても手放しで喜べる状況ではないですね」
−−今後については
「もちろん、クロマグロが資源として少なくなっているのは事実ですし、私どもだけではなく業界全体に影響があります。今後も注意深く動きを見守って参ります」
