細身の美女が「眠れない…」平凡な幸せでよかったのに

★医学博士・木村至信(2)

2010.09.27

 テレビに出ている女医タレント(といってもほとんど勤務実体がない人ばかりですが…)を除いて、女医の日常は地味なことこのうえありません。お化粧が濃いと患者さんからクレームを出され、外科系だとマニキュアもNG。夜勤はエッチな本も普通に置いてある当直室で、睡眠もとれず肌はボロボロ。ママの女医さんはロッカーで搾乳をして冷蔵庫で保存、お家で授乳とか…。はっきり言って悲惨です。

 そんな日々のなか、私が出会ったある女性。彼女は某都市の夜間救急で来院しました。大きなブランドバックとは対照的に身体はすごく細くて、若くて美人で礼儀正しい。でも、どこかバランスの悪い雰囲気で、2匹のミニチュアダックスを抱えてしょんぼりやってきました。

 彼女は急性へんとう炎でした。のどが真っ赤でとても痛そうだし、食事もとれず熱も高い。「今から仕事だから先生助けて」と。行かないと大変なことになる、どうせ家でも眠れないと言います。

 理由は彼女の仕事にありました。

 彼女は多額の借金があり、いつ終わるとも知れない返済のために風俗で働いていました。数時間、お客は彼女に何でもできるという形態。絶対に嫌と言ってはいけない。次に何をされるのかおびえる日々が続き、今ではうなされて不眠症。あげく体力が落ちてへんとう炎にかかってしまったのです。

 借金の理由は聞きませんでした。「私がいけないんです」と泣く彼女に抗生物質の点滴をして、薬を処方して「このままじゃダメ、今の自分を誰かに相談するんだよ」と帰しました。

 これだけ外見に恵まれた女性なのに幸せになれない。生まれたときの手持ちのカードは人よりいいのに、「人生」というゲームについてない。今思えば平凡でよかったのに、どこかで道がずれてしまった。すてきで平凡な恋人が、平凡な毎日の大事さを教えてくれてたら、ちょっと違ったかもしれない。手持ちのカードがいいだけでは幸せになれないのです。

 今どこかで、あの彼女がエコバックさげてふっくらして、ミニチュアダックス2匹と笑顔でいることを、心から願っています。

 戦う癒やし系のドクター兼シンガーソングライター。信州大学医学部卒、遺伝子研究のためアメリカに留学。横浜市立大学医学部にて医学博士取得。現在は横浜市内で主に診療中。ただ今BS朝日の人気番組〈結婚までの1週間〉のエンディング曲〈Wonder−ful Days〉が絶賛発売中。11月19日池袋ライブインロサにてワンマンライブ決定!

 【木村至信バンドホームページ】http://www.kimushino.net

 

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