キハ58系、485系…リニューアルの基本は「懐かしくて新しい」

★水戸岡鋭治のお仕事(下)

2008.08.22


水戸岡氏が初めて鉄道車両のデザインを手掛けた「アクアエクスプレス」【拡大】

【中】に戻る 30を超す列車の車両デザインを手掛けてきた水戸岡鋭治氏(61)は、もともと鉄道に強い関心があったわけではない。JR九州とのつながりは成り行きともいえる。昭和63年、水戸岡さんがアートディレクションを務めた福岡県のリゾートホテルのすぐ横を走る香椎線に新しいリゾート列車が走ることになったことが、きっかけだった。★鉄道特集

 「ホテル側が『とんでもない列車が走って雰囲気を壊されてはかなわない』と心配したようです。民営化したばかりでJRのイメージはまだまだよくなかった…」

 列車のデザインを水戸岡さんが担当することをホテルが提案し、JR九州は了承した。後年、実は“相思相愛”だったことを知る。

 「ホテルのオープニングセレモニーでJR九州の初代社長の石井(幸孝)さんとお会いしてほんの少し話したらしい。そのときに石井さんは『この人にデザインを頼もう』と決めていたそうです。私はよく覚えていないんですが…」

 水戸岡さんはそう振り返る。

 石井元社長と水戸岡さんの橋渡し役は、今の石原進JR九州社長だった。

 「アクアエクスプレス」と名付けられたリゾート列車は、キハ58系という古い気動車をリニューアルしたもの。「図面の描き方も知らないわけですから。工場長や職人さんに教えていただきながらようやくできる状態でした」

 ただ、水戸岡さんには自信もあった。

 〈デザイナーはハードをいじるわけではない。台車はいじらず、台の上の居住空間だけをいじるわけです。そこでは車両エンジニアリングの知識ではなく、いかに心地よい空間をつくれるかが問われるわけで、その点はJRの方より、私の方が情熱において多少勝っているし、経験も多いという自負がありました〉(国際交通安全学会編「デザインが『交通社会』を変える」技報堂出版)

 大きな窓を向いたベンチ式シートや天窓があり、黒カーペットを敷き詰めた「アクアエクスプレス」は、「ホテルのラウンジのような贅沢さ」と評される型破りなリニューアル車両となった。内も外も白い車体、斜めにカットした先頭車両という洗練された外観もあり、各方面から好評を博した。

 水戸岡さんはその後も古い車両の再生を手掛けている。

 鮮やかな赤が印象的な平成2年の「レッドエクスプレス」、赤や青や緑の原色を塗り分けた6年の「ハウステンボス」では485系電車の顔を生かしたままリニューアルした。183系気動車を使った4年の「ゆふいんの森」は木を使った内装で別荘を思わせる高床式のハイデッカー車にがらりと変えた。

 〈もともと485系電車の“顔”は個性的でよくできていました。「せっかくだから“顔”の部分も変えたらどうだろう」という意見がないではなかったけれど、ぼくはもとの“顔”をできるだけ生かして、色だけを変えました〉(水戸岡鋭治著『ぼくは「つばめ」のデザイナー』講談社)

 鉄道には強い思い入れはなかったという水戸岡さんだが、「空間的には昔の車両にもいいところがいっぱいある。でも素材は最先端のものを使わざるを得ない部分もある」とし、「長い歴史のある鉄道文化と、新しいものとの融合を大事にしていきたい。いつの時代も懐かしくて新しいのが基本です」と話す。

 「初めて鉄道が走った150年前は環境を壊したかもしれないけれど、今は最もエコロジカルな公共交通機関。子供たちに鉄道をしっかり認知してもらうには『面白い』って思わせないと。目に見える道具として楽しい色、形、使い勝手のよさをつくるのがデザイナーの仕事です」

 あるときは饒舌に、あるときは言葉を選びながらゆっくりと話す。粘り強く周囲を説得しながら納得のいく仕事を進めてきた誠実な人柄が伝わってくる。

 故郷の岡山県や、長野県小布施町などのまちづくりの総合デザインに携わるなど、水戸岡さんのフィールドは鉄道を超えて、まだまだ広がっている。★鉄道特集

 

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