主食は“大麻バター”塗ったパン 彼女は去り、会社はクビ…

2011.02.10


画・松橋犬輔【拡大】

 検察官が茶色の葉がいっぱいに詰まったビニール袋を取り出した。「あなたの物に間違いありませんか?」。証言台の若い男が、「はい」とうなずいた。昨年11月29日、東京都中野区内の自宅マンションから押収された乾燥大麻だった。その重量は約226グラム。男は大麻取締法違反で現行犯逮捕された。

 被告は、長野県出身の西原和夫(33、仮名)。大学を中退後、介護のアルバイトやIT系企業の契約社員をしていた。大麻にはまったのは2004年ごろ。ナイトクラブで知り合った男から初めて買った。酒を大量に飲んだような解放感が病み付きになる。「もっと安く手に入れたい」。西原は、ネット通販で水耕栽培セットと大麻の種を購入。08年から約1年間にわたって、自分の部屋で大麻を栽培していた。収穫した大麻は、特に効き目が強い「バッズ」と言われる部分をバターに溶かし、「大麻バター」にした。パンに塗って日常的に食べるという中毒者のような毎日だった。

 「とんでもないことをしました」

 西原は企業面接でも受けているかのように、ハキハキと検察官の質問に答えた。そんな彼でも、戸惑う場面があった。

 「あなたは『日本が大麻を規制している方がおかしい』と言って、交際相手の女性が何度もやめるように勧めたのに、大麻を続けていましたね」。「は、はい…。でも180度変わりました。これからは、法令を遵守いたします」。西原は青ざめた顔で、声を振り絞った。逮捕後は彼女にも振られ、会社も懲戒解雇された。刑務所にだけは行きたくないのだろう。

 求刑は懲役2年だが、前科がないため、執行猶予4年の恩情判決を受けた。西原はペコペコと何度も頭を下げて退廷していった。調子はいいけど、本当に大麻の誘惑を断ち切れるのだろうか。ちょっとだけ、彼の人生が心配になった。(文・安藤健二、画・松橋犬輔)

 ■松橋犬輔(まつはし・いぬすけ) リアルな法廷の人間模様を描いた「裁判長!ここは懲役4年でどうすか」を月刊「コミックゼノン」で好評連載中。1月25日発売の3月号から実弟の逮捕・起訴を描いた異色の「特別編」が始まり、大きな話題になっている。また、北尾トロ氏の原作(文春文庫)は映画化され、全国公開中。

 

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