奮闘する女性自衛官「ひと時でも心和んでもらうこと」

★桜林美佐「東日本大震災と自衛隊」

2011.04.13

 海上自衛隊の艦艇では、女性自衛官(WAVE)が、主に被災者や陸自隊員の入浴支援を行っている。

 「私たちは食料にも困らずシャワーも浴びられますが、被災地で活動している陸上自衛隊は、食事も風呂も被災者の前では我慢しながら歯を食いしばっています。同じ自衛官として頭が下がります」

 海自隊員は言う。こうした事情を受け、輸送艦「おおすみ」などでは陸自隊員たちに、被災者の目を気にしなくていい休息の場を提供。食事やお風呂を使ってもらうことになった。

 冷たい缶メシしか食べていなかった陸自隊員は、カレーライスに感動しきりだった。

 普段は「犬猿の仲」と言われたりもする陸海自衛隊だが、そんなことは何処かに吹き飛んでいた。

 WAVEは被災者の入浴が終わると陸自隊員の入浴支援で、1日中立ちっぱなし。寝床に就いたとき、パンパンになったふくらはぎに湿布を貼って寝る毎日だ。

 それでも、もっと大変な人たちがいるのだからと、揺れる艦上でぐっと力を入れ、人々に笑顔で声を掛けている。

 「私も自衛官になりたい!」

 浴槽の女の子たちが言った言葉にぐっときた。自分たちの行動は間違っていないんだと。

 「年はいくつ?」

 「今日…18歳になった…」

 1人の子が遠慮がちに言った。あまりに悲惨な状況が、誕生日だということもはばからせていたのだ。

 「そうだ!」

 そこにいた3人のWAVEは音楽隊のフルート奏者に相談し、コーラス隊を結成。「ハッピーバースデー」の合唱をプレゼントしようと思い立った。

 思いがけない和やかなひと時、入浴に来ていた人々が涙ぐみながら手拍子をしてくれた。

 ふと見ると、遠くにご遺体を収容するイージス艦「あたご」が見える。すぐそばに、泣きながら嘔吐しながら頑張っているWAVEがいると思うと、胸が締め付けられる思いだった。

 原発の支援に赴いた多用途支援艦「ひうち」に乗っていたWAVEは、被曝の危険性から艦を降りるよう命じられたが、彼女たちは「自分たちも行く」と泣きじゃくったという。

 陸自の女性自衛官(WAC)も男性と同じ条件で活動している。夫婦共に自衛官で、子供と連絡とれぬまま出動したという話も聞く。

 「私たちにできることは、ひと時でも心和んでもらうこと」

 涙をのみ込んで、女性自衛官たちは今日も奮闘している。

 ■さくらばやし・みさ 1970年、東京生まれ。日本大学芸術学部卒。フリーアナウンサー、ディレクターとしてテレビ番組を制作後、ジャーナリストに。防衛・安全保障問題を取材・執筆。震災後は防衛省内だけでなく、被災地の基地でも取材した。著書に『奇跡の船 宗谷』『海をひらく−知られざる掃海部隊』『誰も語らなかった防衛産業』(並木書房)など。

 

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