「人の力は無限」女性従業員の使命感に胸熱く

2011.08.11

 「連絡がとれました!」

 IHI東京本社が安堵したのは、震災の翌日だった。あらゆる最悪事態が頭をよぎりながら、やっとつながった福島県のIHI相馬工場の工場長代理の声は驚くほどに明るさがあった。

 「本当はこちらが励まさなければいけないのに、逆でした…」

 奇跡的にケガ人はなく、昨日のうちに従業員を帰宅させたことも分かった。

 陸海空自衛隊の装備部でも、東北にある装備品工場の被害状況を気遣っていた。彼らにとっては単なる業者ではない、日頃から辛苦を分かち合う仲間だからだ。

 また当日、IHI相馬工場には防衛省幹部が視察に訪れていたが、工場内にいたものの無事であることが分かった。しかし、昼食をとった食堂は津波に流されてしまったという。

 翌日から80人以上の管理職などが工場に出向き、従業員の家族を含む安否確認などに追われた。やがて、待機させていた従業員も戻り、それから全員一丸となっての復旧作業が始まったのだ。

 「家族を亡くして天涯孤独の身になってしまった人もいるんです…」

 早く生産活動を始めようという活気の裏側には悲しい現実もあった。しかし、それでも仕事場に来てくれる。工場長は従業員の使命感に胸が熱くなった。

 また、同社ではそれだけのことをさせるに足る処置もしている。今回の震災で自宅が流されてしまったり、原発30キロ圏内などに住まいがある80人以上の従業員の住居を、社員であれパートであれ分け隔てなく社宅として借り上げ確保した。

 実は、作業効率や生産性の高さで世界トップといわれるエンジン部品の製造を支えているのは女性パート職員だ。彼女たちはハイレベルな技能試験もクリアしている。

 「人の力は無限です」

 同社幹部が口にした言葉は、前身である石川島播磨重工業社長だった土光敏夫が残したものだ。それが今も受け継がれているのだ。

 この相馬の地は、工業高校があり気質が真面目などの土地柄を見込んで選んだ場所。何があってもこの地で安心して働いてもらってこそ、工場は稼働する。

 「こんにちは!」

 被災し、まだ余震の不安の中にいるとは思えない元気な声、「能力を最大限引き出す」成果の1つだ。「ビーナスライン」と名付けられた女性だけの工程もあった。私服姿になれば今どきの女性に違いない。ロングヘアを束ねた真剣なまなざしは輝いていた。(ジャーナリスト・桜林美佐)

 

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