新しい会議方法として注目のワールドカフェその効果は?

★ビジネスマン情報源

2011.08.25


終了の合図は挙手。言葉による「命令」ではカフェの雰囲気を壊すからだ【拡大】

 最近、新しい会議の方法として「ワールドカフェ」が広がりはじめている。最大の狙いは「個人の意見やアイデアをつなぎ合わせ、全体としての一体感や納得感を得ること」。一体どんな会議なのか。その内容に迫ってみた。

 ■「会話の温室」をつくる

 今回取材したのは、キャリア開発のパイオニアである「日本マンパワー」が都内で行った「キャリアカウンセリングフォーラム」。企業の人事担当者約100人が参加して、キャリアカウンセリングの最新事情の講演会や情報交換が行われた。

 目を引いたのは「企業内キャリアカウンセリングの未来を語ろう」と題されたセッション。ワールドカフェの手法を用い、初対面同士がたった数時間で腹を割って意見交換ができるというユニークなものだった。

 ワールドカフェとは、1995年に米国のアニータ・ブラウンとデイビット・アイザックスが開発・提唱した“対話法”。カフェのようなリラックスした雰囲気の中で、テーマに集中した会話を行うというものだ。

 5、6人単位で1つのテーマを一定時間話し合い、終わったらメンバーを取り替えて、また同一テーマで話し合うことを繰り返す。メンバーを変えながらグループで話し合いを続けることで、あたかも参加者全員で話し合っているような効果が得られる。

 また、参加者のアイデアがつながりあって、新しいアイデアや「気づき」が得られる(「会話の温室」という)。その結果、重要な課題についての対応力を向上できる。これは、16人程度から数千人規模まで対応できるという。この手法を導入して特に効果的なのは=表(1)=のようなケースだ。

 取り上げるテーマは何でもいいが、今回のキャリアカウンセリングのような、人との対話や豊富な事例が前提になるテーマや、複数の利害関係者がいるテーマには適しているようだ。できるだけ多くの意見を取り入れることができるからだ。

 ■ワールドカフェの流れ

 では今回のイベントを例に、ワールドカフェの具体的な内容を説明していこう。当日は担当の進行役が全体を仕切り、20分×3回のラウンドをこなした。今回は研修の意味があるので、テーマをそれぞれ変えてシミュレーションを行った。

 進行は、まず1テーブル5、6人を1つの「国」とし、それぞれ「テーブルホスト」を1人置く。簡単な自己紹介を1人ずつしたあと、話し合いを行う。その際、テーブルに広げられた模造紙に、全員が話し合いをしながら自由に落書き(絵でもOK)をしていく。

 話し合いの途中には店員に扮したスタッフが飲み物を出し、リラックスした空気を演出する。終了の時間がきたら、カフェホストが手を上げる。気づいた人は話をとめて、同じように手をあげる。これは大きな声で強制的に話し合いを中断させないための工夫だ。

 次のラウンドへ向け、テーブルホスト以外の人は「旅人」として別のテーブル(国)へ移動。行ったテーブルには別の国名が付いている。「ワールドカフェ」の名は、こうした設定にちなんでいるわけだ。

 第2ラウンドでも、まず自己紹介から。次にテーブルホストが、そのテーブルでどのような話し合いが行われたのかを、新しい仲間に簡単に説明する(印象に残った点だけでOK)。続いて「旅人」が自分の国(各テーブルのことを指す)でどのような話し合いが行われたかを、印象に残った点だけ語る。あとは第1ラウンドと同じだ。これを第3ラウンドまで繰り返す。休憩後の第4ラウンド(10分)は全員で振り返る「ハーベスト(収穫)タイム」とし、フリートークでその日を締めくくった。

 休憩中にはテーブル上の模造紙に書かれた“各国”の話し合いの跡を、全員が自由に見ることができ、会の流れと内容の「全体を眺める時間」がとられた。

 以上がこの日行われたワールドカフェの流れだ。話し合いにルールはないが、守りたい「カフェ・エチケット」はある=表(2)。

【自己紹介にちょっとした仕掛け】

 ■継続することで重要な価値に

 当日の話し合いのテーマは、企業内キャリアカウンセリングやキャリア開発支援についてで、ラウンド1は「ウチの会社では、具体的にこのようなことをしています」、2は「皆さんが実現したい状態は、どのような状態ですか?」。3は「その状態に近づくために取り組んでいきたいことは?」だった。

 「自己紹介」には、ちょっとした仕掛けがある。名前・所属紹介のあと「私、実は○○なんです」という紹介を加えるというもの。「こう見えて○○です」と話題を振り、親近感を抱かせる話法だ。このようにワールドカフェは、リラックスして打ち解けあうことを主眼に置いている。

 表(3)は当日の参加者に聞いた感想だ。これらの声から、ワールドカフェが“気づき”を得られる手段になっていることがわかる。参加した企業の人事担当者にはワールドカフェ経験者も多く、キャリアカウンセリングについて多くの見知らぬ人たちと腹を割って話し合えたことがわかる。

■“勝ち残る企業”の条件に

 ワールドカフェが注目されるようになったのは、従来の会議や打ち合わせでは行き詰まりを感じることが多くなってきたからだ。

 限られたメンバーだけでは、「慣れ」が思考の妨げになる。会議で必要なのは、幅広い知識や意見をできるだけ多く取り入れ、アイデアや意思決定に役立たせることだ。

 また、ビジネスにおける新しいアイデアや発見は、会議の席よりも居酒屋や喫茶店で生まれるほうが多い、ということもワールドカフェ誕生の要因になっている。

 ワールドカフェは結論を出すことが目的ではないので、万能ではない。従来のトップダウンの形がスピーディーな場合もある。だが、個人の能力や意見を多く取り入れられるワールドカフェを日々継続的に行えば、大きな蓄積になる。急激な変化への対応が求められる現在、ワールドカフェの実践は“勝ち残る企業”の必要条件になるかもしれない。

 

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