銃砲弾火薬メーカーを襲った恐怖…響き渡る悲鳴

2011.09.06

 「12・7ミリ」という数字を聞いて、すぐにピンとくる人は軍事通といえるだろう。12・7ミリ重機関銃(機銃とも呼ぶ)。かつて零戦にも搭載されていたものだ。

 この銃弾を製造している日本工機は、福島県にある。今回の震災では、12・7のラインがとりわけ大きな被害を受けた。

 年度末が近付いていた3月11日は、出荷用の製品がそろいつつあり、倉庫が次々にいっぱいになっていく時期だった。とはいえ、まだ製造途中の物もあり、「ラストスパート」だと意気込んでいたときに、地震は起きた。

 「きゃー!」

 発射薬を袋に入れてミシンで縫う作業場では女性たちの悲鳴があがった。この工程は、極めて高いスキルを求められるが、女性が担っていて、工場の人員の実に2割を占めている。

 「避難場所へ!」

 訓練で定められていた所へ避難し始めるものの、次々に襲う揺れが歩行を阻み、女性たちはしゃがみこんで震えている。それを男性従業員が励ましながら外に出た。

 広大な敷地内に点在する数々の作業場で避難が始まり、同時に安全のための措置がなされていた。

 「緊急停止!」

 ちょうど、爆薬が化学反応を起こしているときだった作業場では、即座に停止措置がとられた

 ここの壁には常に非常時の「緊急停止マニュアル」が貼ってあり、作業者にとってその手順は頭にたたき込まれていたのだ。それでもその場に緊張感が走る。

 「最も怖いのは火が出ることです」という関係者の言葉通り、どんなことが起きても火の気を断つことが何より大事だ。そのために、同社のような銃砲弾火薬メーカーは、平素から火薬類取締法や武器等製造法などにより厳しい規制を受けている。

 ゴルフ場3つくらい入る程の敷地には、延々と有刺鉄線が張り巡らされ、保安距離は極めて厳密。近くに公共性の高い施設があることは許されない。

 しかし、向こうから来るものを拒むことはできず、隣にゴルフ場ができそうになったときは頭を悩ませた。

 「結局、その土地を買ってしまったんです」

 同社関係者が、打ち明けてくれた。安全管理上とはいえ、日本の法規制は世界屈指の厳しさといわれ、企業負担は極めて大きい。蛍光灯もコンセントもイスも、1つあたり10万円ほどはかかる特殊な防爆仕様である。その、神経質な程に整備されていた設備が、一瞬にして甚大なダメージを受けることになった。

 ■桜林美佐(さくらばやし・みさ) 1970年、東京生まれ。フリーアナウンサー、ディレクターとしてテレビ番組を制作後、ジャーナリストに。防衛・安全保障問題を取材・執筆。著書に「誰も語らなかった防衛産業」(並木書房)など。

 ■人気連載「誰かのために」が9月10日、「日本に自衛隊がいてよかった」(桜林美佐著、産経新聞出版)として発売

 

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