「森永製菓」戦前から自衛隊とつながり

2011.09.15

 震災発生後、しばらくして、山形・第6師団長(当時)の久納雄二陸将の様子がおかしいと噂になった。

 ひどい口内炎で、しゃべることができない。現場で活動する多くの隊員も同様に、口内炎で痛くて食べられない、水も飲めないといった症状で悩む者が多かった。口内炎が、なぜできるかは定かではないが、ストレスやビタミン不足によるものだというのが通説だ。

 「口内のトラブルは作業効率を低下させる。なんとかできないか」

 切実な現場からの声に、どうにかして応えたいが、手の施しようがない。そんな時「これを使ってください」と、ビタミンなど栄養素が含まれている「ウイダーinゼリー」提供の申し出があった。

 森永製菓からの好意だったが、倫理規定上、無料で受け取るわけにはいかない。しかし、「あれならば荷物にならないし、飲みかけでも蓋をしてポケットに入れられる」という現場からの声もあり、防衛省は早速、調達を決めた。

 ところが、同じようなことを考えたのは自衛隊だけではなかった。

 「数が足りません!」

 民間需要が高まり、商品が瞬く間に品薄になっていたのだ。

 「売り切れてもいい。自衛隊分はなんとしても確保せよ!」

 部下たちにそうげきを飛ばしたのは同社営業部長だった。

 「DNAなんでしょうか…」

 上司の言葉は会社のルーツを物語っていた。実は、同社は戦前から将兵のためにお菓子を作っていた歴史を持つ。

 キャラメルや羊羹だけではない。救急栄養補給食として南方向けの「密林食」北方戦線向けのアルコール入りチョコレート、航空部隊の機上応急食などなど…。

 その出自を考えれば、国民のために栄養不足と戦いながら頑張っている自衛官のために尽力することは、ごく自然なことだった。

 活動人員分を確保することは軍という組織にとっては当たり前であるが、日本では自衛隊に対する特別扱いは許されないため、誰かが決断しないと手に入らない。

 輸送手段の問題もあった。せっかく数をそろえても、こんどは「ガソリンがない」「福島を通ることはできない」という理由で運んでくれる業者がいなかったのだ。

 結局、4月に入ってから陸自車両が運ぶことになったが、今後、こうした場面で自衛隊への補給をいかにするか、大きな課題が残った。(ジャーナリスト・桜林美佐)

 ■人気連載「誰かのために」が「日本に自衛隊がいてよかった」(桜林美佐著、産経新聞出版)として発売中

 

注目情報(PR)