手術しても頭に痛み…脳脊髄液減少症を併発

2011.11.16


山王病院(東京・港区)脳神経外科・高橋浩一医師【拡大】

 一つの症状に対して、原因疾患も一つとは限らない。複数の病気が複合的に一つの症状を起こしていることもある。今回は「頭痛」から始まった奇跡の生還の物語。

野口朋広さん(39歳=仮名)のケース

 頭全体を支配する痛みが始まったのは2年前のこと。頭痛薬を飲んでも効かないし、日に日に痛みが強まってきたので病院の脳神経外科を受診。検査の結果「慢性硬膜下血腫」と診断されました。

 脳と頭蓋骨の間に血がたまる病気で、放置すれば死に至ることもあるが、手術をすれば治るとのこと。そこですぐに入院し、手術を受けることになりました。

 手術は無事成功し、術後は痛みも消えて喜んでいたのですが、3日後に痛みが再発。検査すると血腫が再発しているとのことで再手術。しかし終わると数日でまた痛み…。

 3回目の再発時に、主治医は「別の原因を考えたほうがいいかもしれない」と言って、別の病院の脳神経外科を紹介されました。行った先は東京・乃木坂の山王病院。脳神経外科の高橋浩一先生の下で検査を受けたところ、「脳脊髄液減少症」を併発していることがわかったのです。

 脊髄から何らかの理由で脊髄液が漏れ出す病気で、これが脳の状態を悪化させているとのこと。そこで私自身の血を抜いて、背中の脊髄周囲にある“漏えい部”に注入し、脊髄液の漏れをふさぐ治療を受けました。

 この処置の後に元の病院で4回目の手術を受けたところ、今度は完全に症状が消え、それ以降再発もなくなりました。

 頭の痛みから始まった治療で、よもや背中に処置をされるとは思ってもみませんでしたが、それで完治したのだから、やはり脊髄液の漏れが原因だったのでしょう。

 人の体は意外なところでつながっていることを、自分の身をもって勉強した次第です。

専門医はこう見る

 山王病院(東京・港区)脳神経外科・高橋浩一医師

 硬膜下血腫の再発を繰り返す人から脳脊髄液減少症が見つかるケースは少なくありません。ただ、脳脊髄液減少症という病気そのものの認知度が低いため、医師がその疑いを持たないケースがあることも事実です。

 脳脊髄液が減少すると、頭蓋の中の脳の位置が全体的に下がってきて、血腫ができやすくなる。野口さんも言う通り、慢性硬膜下血腫の手術そのものは決して難しいものではないので、それで何度も再発する場合は、他に原因があることを疑うべきなのです。

 脳脊髄液減少症は、造影MRIで診断できる場合があります。野口さんの受けた治療は「ブラッドパッチ法」といって、その名の通り、患者自身の血液で脊髄液の漏れをふさぐ治療法。日本ではまだ健康保険が適用されておらず、そのため国内でこの治療を行っている医療機関は限られます。最初にかかった医師が脳脊髄液減少症についての情報を持っていないと、なかなか診断にさえ結びつかないケースが出てくるのが実情です。

 一方の硬膜下血腫は、初めは頭痛から始まり、進行すると意識が遠のいたり“ボケ”に似た症状が出て、最終的には呼吸機能などが悪化して死亡する重大疾患。手術が簡単だからといって、再発を放置するのは危険です。

 硬膜下血腫を繰り返す場合は、自分から他の病気の存在を疑ってみるべきでしょう。(構成・穐田文雄)

 

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