会津鉄道の駅にたたずむ“ネコ駅長”

★会津鉄道(下)

2011.12.18


会津鉄道・芦ノ牧温泉駅の猫「ばす」【拡大】

 会津鉄道の芦ノ牧温泉駅には猫が住んでいる。名前は「ばす」。映画『となりのトトロ』に出てくるねこバスに似ているため、この名が付けられたそうだ。座っているとよくわからないが、歩く姿を横から眺めると、なるほどねこバスだった。ばす目当ての乗客も多く、2008年に「名誉駅長」の肩書が付いた。任命式では、先輩格にあたる和歌山電鉄貴志駅のたま駅長(現・常務執行役員)から祝電が届いたというから、シャレがきいている。

 駅は列車の乗り降りをする場だ。機能だけとことん突き詰めれば、どこか殺伐とした空間にすらなってしまう。駅の動物は、無機質な場所に血を通わせ、利用客の心を和ませる存在ともいえる。

 記者は学生時代、首都圏の某駅で平日朝に駅員のバイトをしていた。いわゆる“ケツ押し”ではなく、折り返し電車の整列乗車を手伝う役回りで、普通の駅員と同じ制服を貸与されていた。アナウンスも少しやったりした。

 その駅のホーム下に住んでいたのが、老犬のクロ。利口な犬で、午前8時を回ると電車がしばらく来なくなる1番線の線路を散歩するのが日課だった。たまに、お客さんが「駅員さん、線路に犬が!」と血相を変えていたが、そのたび、年配の駅員が「アイツはここで一番のベテランだから心配ないですよ」と説明していた。お客さんもこういわれただけで「ああ、そうなんですか」と納得。殺気立ったラッシュ時の終わりに、柔らかい空気が流れたのを記憶している。

 今、地方鉄道の多くが経営難に直面し、廃止スレスレの状態で列車を走らせている。国土交通省の調査では、地方の中小鉄道の事故発生率は都市部の大手鉄道と比べて約2倍だそうだ。そんな地方鉄道にとって駅の動物は、利用客を増やす貴重な救世主ともいえる。駅を温かい場にするため、何より大切な鉄道を残すため、猫の手でも、犬の手でもどんどん借りてほしい。(久保木善浩)

 

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