動悸、息切れで検査したら…心臓弁膜症だった

2011.12.28


埼玉東部循環器病院心臓血管外科部長・田中佐登司医師【拡大】

 動悸(どうき)、息切れ、めまい…。現代人なら誰もが経験のある何気ない症状の陰に、命を脅かす恐ろしい病気が隠れていることがある。「年のせい」と甘く見ていると痛い目に遭う。長生きしたければ、早目早目の対策が不可欠だ。

 ■土井秀嗣さん(57歳=仮名)のケース

 いまのマンションに住んで20年。駅まで15分ほど歩きますが、20年も住んでいるので慣れっこになっていました。

 ところが少し前から、この距離が体にこたえるようになってきたんです。しかも急速に…。仕事で疲れた夜だけでなく、朝会社に出かけるときにも、駅に着く前に息切れがする。電車に乗って落ち着くと、ドキドキと動悸がするのを感じるんです。

 この“動悸”は夜寝るときにもあって、ベッドに入って電気を消したあとも、自分の心臓の音が聞こえるくらいハッキリ感じる。年齢的にもメンテナンスが必要かと考えて、病院に行きました。

 心電図を撮って、聴診器で心臓の音を聴いた医師が「弁膜症の可能性がある」という。そこで検査入院をして心エコーと血管内に細い管を入れて内部を見るカテーテル検査をしたところ、左心室から大動脈に通じるところの弁が壊れていることがわかったんです。心臓から血液を送り出す機能が大幅に低下しているとのことで、手術を受けることになりました。

 痛みもなく、自覚症状と言っても動悸や息切れくらいしかなかったのに、よもや心臓の手術を受けることになるとは驚きました。

 壊れた弁を取り除き、代わりに人工的に作った弁を設置するという手術を受けて、無事成功。術後10日ほどで退院し、自宅で数日休んだのちに、仕事に復帰しました。好きなゴルフはしばらく禁止されていますが、命が助かったんだからそれくらい我慢できます。

 些細(ささい)な症状からこんな大病が見つかったことで、あれ以降体調管理には気を使っています。薬もきちんと飲んでいるし、食生活も野菜中心に変えました。変な言い方ですが、病気をしたおかげで長生きできそうな気がしています(笑)。

 ■専門医はこう見る

 埼玉東部循環器病院(埼玉県越谷市)心臓血管外科部長・田中佐登司医師

 全身の臓器から静脈を経て心臓に戻ってきた血液は、右心房から右心室に送られ、一旦肺に行った後、再び心臓に戻って、左心房から左心室を経て、全身に送られていきます。

 この時、心臓の内部での流れを制御するために各部屋の出入り口に「弁」が設けられています。

 加齢や動脈硬化などが原因となって、この弁が故障したり、本来の役割が果たせなくなるのが「心臓弁膜症」。心臓のポンプ機能が低下して、放置すると不整脈や心不全、多臓器不全などを招いて死に至る重大疾患です。

 症状としては土井さんの感じた動悸や息切れなどがありますが、中には「めまい」を訴える人もいます。

 いずれも忙しいサラリーマンが見逃してしまいがちな症状ですが、循環器系の治療を専門とする医療機関で検査をすれば、早期発見、早期治療が可能なので、思い当たる症状があれば、早目に受診すべきです。

 動脈硬化や糖尿病などのリスクを抱えている人は、定期的に心臓ドックを受けるなどして、重症化を防ぐ取り組みが必要です。(構成・穐田文雄)

 

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