年の瀬に列島を寒波が襲来。歩くだけで、体温が奪われる。こんなとき「寒い」と言いながら、意識せずに身体に力を入れて息(いき)んでしまう。これが大変危険なのだ。気づかぬうちに血管や心臓が破壊され、最悪の場合は、心筋梗塞や狭心症、脳卒中に結びつく。専門医の指摘に耳を傾けよう。
■ジワリとダメージ
心臓や血管にダメージを与えるのは、急速な血管の収縮や血圧の上昇。日頃から高血圧という人だけでなく、そうでない人も、冬場の寒い外気の影響でそれらのことが起こりやすい。
東京医科大学病院循環器内科の冨山博史教授が説明する。
「身体の中心には、心臓や肺、肝臓、消化器などの大事な臓器があります。その中心部を寒さから守るために、血管を収縮して熱を逃さないような仕組みになっているのです。収縮した血管に血液を通すには、圧力がいつも以上に必要になります。血圧は上がり、心臓にも負担がかかりやすい。自覚症状はなく、ジワリと症状が進行するため、血管や心臓にダメージを受けていることに気づかない人も多い」
血管を収縮するには、交感神経が働く。それが「息み」と関係が深い。
■寒さで血圧上昇中!
交感神経は、アドレナリンなどの「闘いのホルモン」を出すことで知られている。
たとえば、部下などに怒りをぶつけるときを想像してほしい。顔を真っ赤にしてこぶしを握り、声を荒らげるシーンだ。そのとき働いているのが交感神経で、寒さの中では怒りではなく、息みとなって現れる。
「交感神経は、暖かい室内から急に寒い外気に触れたときも、身体の熱を逃さないように働きます。そのとき、人は自然に息むのです。冬場の長い通勤時間や外回りの仕事では、寒さのため血圧は上昇傾向にあります。さらに急に寒い場所に移動すると、血圧が急激に上昇し、脳卒中に結びつく。あるいは、心筋梗塞や狭心症で倒れることは珍しい話ではないのです」と冨山教授は指摘する。
40代で一見健康そうでも、太めの体形で、「階段を上ると息切れがしている」人は要注意。血管が狭く硬くなる動脈硬化が進んでいる可能性が高い。こういう人が、寒さで息むと危ないのだ。
■急な温度変化避けよ
冨山教授から教えてもらった「息み解消法」(別項参照)を見ながら、対策を考えよう。寒さの息みによる脳卒中や心臓病を防ぐには、常に温かくすることが重要になる。
外出するときには防寒着によって、室内と外気の急激な温度差を避けることも必要だ。
「急に寒い屋外に出ると、『うっ!』と息んで身体の中央に力が入ります。胸の筋肉が硬直して、心臓への血液の戻りが少なくなることがあるのです。戻る血液が少なければ、心臓から出てゆく血液も少なくなり、血管が詰まりやすい。健診で健康と評価されている方でも注意が必要です」
2月までは寒さが続く。忘年会や新年会のほろ酔い気分でコートを着忘れたり、寒さで息んだり、なんてことがないように、くれぐれもご注意を。
■寒さによるイキみ解消法
□外出するときには、コートだけでなく手袋やマフラー、らくだの股引やヒートテックなどを着用し、寒さを感じにくくする
□風が吹いている日には、ウールのコートではなく、風の通しにくいダウンのコートを活用。電車内で暑く感じるようなら、乗車時にコートは脱いでおく
□客先から帰るときも、失礼だからと遠慮せずに、建物内でコートを着るように心掛ける
□帰宅後に熱い湯船に一気に入らないこと。シャワーや湯船のお湯で、足元を温め、温度に身体を慣らしてから湯船へ
□突然の冬場の屋外での運動は避ける。運動不足解消をするときには、トレーニングジムといった屋内施設を活用する
□1日3食バランス良く温かいものを食べて、血の巡りをよくする。朝食抜きという人は、牛乳やお茶など、温かい飲み物を飲んでから出勤を
