日本一スカートが短いから?滋賀“痴漢多発警報”の真相

2012.09.22


痴漢被害防止のため、滋賀県警などは女子高生らにチラシを配布し注意を呼びかけている=9月17日、滋賀県湖南市のJR石部駅前【拡大】

 滋賀県で9月、強制わいせつ事件や痴漢事件などが多発している。1週間で、帰宅途中の女子高生や若い女性が抱きつかれるなどの事件が計11件も立て続けに発生したため、同県の嘉田由紀子知事が会長を務める県民会議が8日、全国では異例の「痴漢等多発警報」を発令。しかし、発令後もわいせつ事件は続発し、制服姿の女子高生がねらわれるケースも多い。インターネット上では、滋賀の女子高生のスカートが「全国一短い」との噂が広まっており、関係者はやまぬ被害に頭を悩ませている。(小川勝也)

異例の警報

 「痴漢等多発警報」を発令したのは、同県や滋賀県警、各種防犯団体などで構成し、今年1月に創設された「『なくそう犯罪』滋賀安全なまちづくり実践県民会議」(会長・嘉田由紀子知事)。これまで、交通事故や振り込め詐欺の多発などで、県や県警が警報や注意報を出してきたが、そのほか犯罪全般に発令できるのが特徴だ。ただ、痴漢など“わいせつ系”に絞った今回の警報は全国的にも珍しい。

 警報発令のきっかけになった1〜7日のわいせつ事件のうち、6日午後6時50分ごろには、近江八幡市内の水田に囲まれた路上で、自転車に乗って帰宅途中だった女子高生(17)が、見知らぬ20〜30歳くらいの男にいきなり胸などを触られた。男は車に乗って逃げた。また同じ日の午後3時15分ごろにも、大津市のJR石山駅近くの駐輪場内で、帰宅途中の女子高生(15)が、見知らぬ男に声をかけられた後、体を触られた。

 7日午後6時半ごろには、甲賀市内のスーパー屋上駐車場で、アルバイト店員の女性(22)が、男に声をかけられた。女性は自分の車の助手席に押し込まれた上、胸などを無理矢理さわられ、首の捻挫などのけがをした。県警は4日後の11日、強制わいせつ致傷容疑で同市内の無職男(34)を逮捕している。

 11人の被害者のうち、女子高生が5人を占め、20代の女性も3人いた。女子高生はいずれも制服姿だった。また、強制わいせつ事件は6件、滋賀県迷惑防止条例違反(痴漢、盗撮など)事件は5件だった。

 警報では嘉田知事の緊急メッセージも添えられ、相次ぐわいせつ事件に「『人の尊厳を踏みにじる卑劣な犯罪』は、被害に遭われた方だけでなく、その家族や友人の方など、多くの県民を深く傷つけ、そして不安に陥れるものであり、決して許すことはできません」と強い言葉で憤りを表現。発令期間中、各地域で見守り活動を積極的に行うなど、「県民が総ぐるみとなった犯罪抑止活動」を求めた。

 だが、発令後も女性をねらったわいせつ事件は収束しなかった。発令した当日の8日、大津市内のショッピングモールで、買い物をしていた無職女性(21)が、20代半ばぐらいの男に背後から胸を触られた。

 さらに、9日には一気に被害女性の年齢が上がり、同市内の量販店駐車場で、近江八幡市内の女性(55)が、30代くらいの男に胸などを触られた。男は「いくつですか。結婚しているの」などと声をかけたという。

 このため、「痴漢等多発警報」の発令期間は当初17日までだったが、27日まで10日間延長された。

ねらわれる9月

 実は、インターネット上では滋賀県の女子高生は「日本一、制服のスカート丈が短い」といわれている。

 統計があるわけではなく風評に過ぎないが、数年前にネット上にそんな「噂」が駆け巡った。こうした噂は歓迎できない影響をもたらした。

 ネット上での風評拡大後、盗撮マニアが滋賀に集まり、電車内などで、県迷惑防止条例違反(盗撮)容疑で逮捕されるなどのケースが目立つようになった。県警によると、盗撮行為の認知件数は平成20年27件、21年29件、22年33件と増え、23年は28件と減ったものの、今年は8月末までで29件と、すでに昨年を上回っている。

 また今年は、盗撮のほか、痴漢などを含む県迷惑防止条例違反が8月末までで111件。被害者のうち約40件が女子高生とほぼ3分の1を占めている。

 女子高生らをねらった盗撮を含むわいせつ事件の傾向について、県警の捜査関係者は「学校の新学期が始まる4、5月と、9、10月に増加する傾向にある」と指摘する。

 夏休みや春休みなど学校が長期休暇になれば、女子高生が毎日同じ通学路を通うことはなくなり、制服ではないため、犯人が高校生と判断することは容易ではない。

 これに対し、学校が始まると、登下校時に決まった通学路を決まった時間に通ることになるため、待ち伏せなどもしやすくなる。

 先述の捜査関係者は「登下校の時間や、駅からの帰り道でターゲットを待っている」と犯人の心理を分析する。

女性も自衛策を

 「『なくそう犯罪』滋賀安全なまちづくり実践県民会議」は、各種団体の防犯活動で犯罪を抑止しようとするが、県警でも、痴漢などの防止に向け啓発に力を入れている。

 県警は、わいせつ事件の被害が多くなる毎年4月と9月に「痴漢等被害防止活動期間」を設定。県内で最も利用者が多く、女子高生も多いJR草津駅(草津市)構内で、市職員らとともに、痴漢被害への注意を呼びかけるチラシを配布している。今月は警報発令期間中と重なる10〜19日で、被害防止のために活動。14日には、JR石部駅(湖南市)前で、女子高生らにチラシを配布した。

 また、期間に合わせてJR西日本などの女性職員に痴漢被害の防止を呼びかけるポスターの作成を依頼。列車内で痴漢被害にあった場合、「勇気を出して声をあげてほしい」などと書いたポスターをJR駅構内に貼り出している。

 ただ、いくら防犯の啓発活動をしても、被害者となる女性自身も身を守ろうという意識を持たなければ効果はない。

 県警の捜査関係者は「何よりも重要なのは、女性自らが自衛策をとること」と強調する。

 被害者の中には、イヤホンで音楽を聴いていたり、携帯を操作していたりして、背後からきた犯人に気づかなかったケースもある。また、わいせつ事件の被害者は、制服姿のほか、ミニスカート、ショートパンツといった肌の露出が大きい服装である場合も多いという。

 同じ捜査関係者は「苦しむ女性をつくりたくない。服装については個人の自由でいえないが、友達と複数で下校したり、家族に迎えを頼んだりして自分の身を守る努力もしてほしい」と話している。

 

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