酒蔵の“酒林”に学べ 新酒の季節到来のサイン

2012.11.13


杉の葉を丸めた酒林が酒蔵に吊るされた【拡大】

 新酒の季節が到来したことの合図に、酒蔵などに「酒林」(さかばやし)が掲げられる。酒林とは、杉の葉を束ねて丸く刈り込んで作った直径30〜60センチくらいの一種のシンボル看板で、杉玉ともいわれる。

 なぜ杉の葉なのかというと、もともと酒の醸造と運送の容器は壺だったのが、16世紀なかばに杉の桶に変わった。その結果、酒造りに大きな変化があらわれた。まず、杉の持つ酸化作用で酒の醸成に好ましい影響が出た。酒の風味が増し、また杉に含まれる芳香性のテルペンや精油が溶け出して独特の木香(きが)がつき、防腐効果も高まった。

 さらに、大型の桶が作られるようになると大量生産や大量輸送が可能になり、販路も拡張した。江戸時代、「下りもの」といわれた関西の酒を江戸に専門に運ぶ樽廻船もはじまった。そのような酒と杉の出会いから杉の葉で作った酒林が告知サインとして登場した。さしずめ店頭の告知イベントといったところだろうか。

 酒と酒林のような取り合わせは、実はローマ時代にもあった。当時ワインを売る店は、ツタの枝を束ねた「ブッシュ」というものを掲げていた。ワインとツタの結びつきはディオニュソス(バッカス=豊穣とブドウ酒の神)神話に由来するという。

 また、紀元前250年頃の中国では、「幟」(のぼり)という酒旗を掲げていたことをその時代の思想家の韓非が著作「韓非子」で書いている。幟は酒●(=施の也が斤)(しゅき)、酒旆(しゅはい)、酒望(しゅぼう)などとも呼ばれ長く伝わっていき、特に唐代の詩人たちは好んで題材にした。

 さらに唐以後、宋にいたる10世紀の中国の酒屋では、●(=木へんに又の中に「、」)子(さし)と呼ばれる二股になった小枝を立てかけたという。日本でも二股大根を縁起物として大黒天に供える習慣があるが、中国のように縁起を担いだのかもしれない。

 ■『企画のヒント』

 酒林のように、単純でわかりやすいサインを店頭などに掲げる発想は、他の商品やサービスにも応用できる。「新米入荷」「新茶入荷」「新柄入荷」といった店からのニュースを一目で知らせるPOPを作り、毎年その時期に店頭に掲出していけば、店の新しいシンボルとして通行客やマスコミの話題になる。 (広告・イベント研究家 熊野卓司)

 

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