3・11からずっと…取り残された「スーパーひたち」

★常磐線(下)

2012.12.14


原ノ町駅に停められたままの特急「スーパーひたち」用車両【拡大】

 原ノ町駅(福島県南相馬市)に到着すると、留置線に「スーパーひたち」の車両「651系」をみかけた。新型「E657系」の導入によって姿を消しつつある“先代”の車両である。

 1989(平成元)年にデビューした651系は、新時代の到来を告げる車両だった。特急といえばクリーム4号と赤2号の塗り分けばかりだった当時、白とグレーを基調にしたボディーの印象は強烈そのもの。まだ小学生だった記者にとっても憧れの存在だった。

 駅の外へ出てから側へ寄ってみて、驚いた。長らく放置され、汚れが目立つのだ。白い車体に黒ずんだ汚れが痛々しい。

 「あんたもコレが目当てかい。最近カメラ持ってくる人、結構いるよ」と、散歩中のおじさんに話しかけられた。「すっかり汚れちゃって、何だか気の毒だね。この電車、あの日からずっとここにあるんだよ」とのこと。あの日とはもちろん、昨年の3月11日を指す。

 あの日−。上野を10時ちょうどに発車した「スーパーひたち15号」(11両編成)は、途中のいわきで7両を切り離し、13時9分、残りの4両が終点の原ノ町に到着した。約1時間半後、巨大地震が発生。福島第1原発の事故へとつながった。その後、常磐線は各区間で運転が徐々に再開しているものの、原発に近い原ノ町−広野間は不通のまま。原ノ町にいた4両編成は取り残された存在となった。

 車両をよく見てみると行き先表示は「上野」になっていた。あの日、再び上野へ戻るための準備をしていたのだろう。原ノ町−広野間の運転再開はいつになるのか分からない。それでも「上野」を示す行き先表示には、ふるさとの復興を願う人々の思いが込められているのではないか。そんなことを考えずにはいられなかった。(久保木善浩)

 

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