選管職員のミス 個人責任追及制度で公務員に緊張感を

2012.12.28


衆院選の開票作業【拡大】

 今回の衆議院議員選挙においては、各地の選挙管理委員会に所属する公務員によるミスが続出した。あろうことか、寝坊で投票開始を遅らせ、あるいは、小選挙区の投票時に比例代表用の用紙を誤って交付するなどした。

 中にはこれらのミスで無効票になる例があった。無効票の有無が当選・落選を分けるような接戦だった場合には取り返しがつかないことにもなり得る。言語道断である。

 なぜ、かようなミスが起きるのか。その原因は緊張感の欠如。ではどうして緊張感が欠如するのか。本日はこの点を視界良好にしたい。その読み解き鍵は「公務員改革のために損害賠償責任を公務員個人に直接負わせる制度設計と意識改革の必要性」である。

 読者の皆様は果たして知っているだろうか。今の法律(国家賠償法)では、公務員のミスで国民が被害を受けても、その公務員に損害賠償を直接請求できる制度になっていない。「公務員に代わって」国や自治体が損害賠償責任を負うことになっているのである。

 これは、公務員に過大な責任を負わせると職務遂行に当たり公務員が高額な損害賠償責任をおそれて萎縮するので、公務員の責任を軽減するためとされている。

 しかし、今の時代、公務員にそうした配慮が必要であろうか。逆にこうした配慮が緊張感に欠ける公務員を次々に生み出す原因になっていないだろうか。

 というのは、今の時代、会社役員において、積極的なミスに基づいて損害を負わせたという理由だけではなく、損害が発生しないように予防措置を講じなかったという場合(不作為)であっても、損害賠償責任を直接負わせる裁判例も出ている。これは、賠償責任を負わせることで役員に緊張感を持たせ、職責を果たさせようとする目的が背景にある。この目的に照らせば、公務員にも損害賠償責任を直接負わせる制度を認めてもよいはず。

 結局、公務員がミスをした場合、国や自治体が損害賠償責任を「公務員に代わって」負うような制度を廃止し、その公務員に、例えば何百万円の損害賠償責任を直接負わせる制度に改革をすればよい。それにより公務員の意識が変わり、緊張感を持つことになる。

 今回、選管公務員のミスによって結果として無効票とされた有権者は、まさしく憲法で保障される選挙権を侵害されたのであるから、その侵害に対する賠償金を請求できる。今後はこのようなミスをした選管公務員に多額の賠償金を直接負わせるような制度に変えれば、公務員に緊張感と意識改革を必然的にもたらし、不祥事・ミスの減少になると思われる。

 ■若狭勝(わかさ・まさる) 元東京地検特捜部副部長、弁護士。1956年12月6日、東京都出身。80年、中大法学部卒。83年、東京地検に任官後、特捜部検事、横浜地検刑事部長、東京地検公安部長などを歴任。2009年4月、弁護士登録。座右の銘は「桃李言わざれども下自ずから蹊を成す」。

 

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