“3億5000万円”で「新自由クラブ」 新党結成秘話編

2013.02.13


新党・新自由ク躍進のカゲには河野洋平さんの私邸売却資金が【拡大】

 「渡辺さんさ、頼みがあるんだけど」

 世の中がロッキード事件一色だった1976(昭和51)年春、自民党の山口敏夫衆院議員(当時)が声をかけてきた。

 のちに「政界の牛若丸」と呼ばれて労働大臣になる山口さんも、当時はまだ当選3期目の若手議員。「ライオンズマンション」で知られる大京の創業者の横山修二氏と仲がよく、その縁で麻布自動車に遊びにきていた。

 「頼みって何?」

 「目黒にある河野洋平さんの家を買ってくれない? 実は河野さんたちと新党を結成するんだけど、資金が足りなくて」

 こう声を潜める。

 そこで、すぐに目黒・大鳥神社に近いお屋敷町の約300坪の河野さんの豪邸を見にいった。

 「いくら必要なの?」

 「ズバリ、3億5000万円」

 坪110万円強。当時はバブル経済が始まる前。妥当な金額だった。

 家を購入した直後、自民党の政治倫理に不満を持つ河野さん、山口さん、田川誠一さん、西岡武夫さんら6人が自民党を飛び出して「新自由クラブ」を結成した。新党は圧倒的な人気を呼び、76年暮れの総選挙で17人も当選させた。

 この選挙で初当選した中川秀直さん(のちに内閣官房長官、自民党幹事長)もウチの会社に出入りするようになった。自民党復帰後、外相、自民党総裁、衆議院議長を歴任した河野さんからも、パーティーなどで会うたびに「渡辺さんには世話になったよね」と声をかけられた。

 昨年秋、かつてメーンバンクだった横浜銀行の元副頭取と銀座のレストランで昔話に花を咲かせているとき、ふと横の席を見ると、河野太郎さんが食事していた。挨拶をした後、こう切り出した。

 「お父さんに聞いてみてよ。私が家を買ったことにより、新自由クラブができたんだから」

 そして昨年暮れ、議員会館で太郎さんに会ったとき、「オヤジに聞いて思い出しました。坂を上がったところにある家でしたよね。私、小学生のとき、住んでました」なんて話をしてくれた。

 購入した目黒の土地は、鹿島建設に頼んで高級マンションを建てた。一時、このマンションの3階に住んでいたことがあって、以前にこの連載で触れた「2度目の逮捕」は、早朝、ここに警察がドッと押しかけてきたことから始まった。

 逮捕といえば、山口敏夫さんも背任、業務上横領、詐欺の共犯などで逮捕されたことがある。新自由クラブも分裂し、10年後の86年、自民党への合流に伴い解散した。時代の流れを感じる。(次回は政治家交流編)

 ■渡辺喜太郎(わたなべ・きたろう) 麻布自動車元会長。1934年、東京・深川生まれ。22歳で自動車販売会社を設立。不動産業にも進出し、港区に165カ所の土地や建物、ハワイに6つの高級ホテルなど所有し、資産55億ドルで「世界6位」の大富豪に。しかし、バブル崩壊で資産を処分、債務整理を終えた。現在は講演活動などを行っている。著書に『人の絆が逆境を乗り越える』(ファーストプレス)。

 

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