【日本の解き方】中国TPP参加検討の本音 米国の尖閣問題への関与を牽制

2013.06.07


TPPの拡大交渉会合後に記者会見する各国の首席交渉官=5月24日、リマ市内のホテル(共同)【拡大】

 中国がTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)への参加を検討すると明らかにしたが、狙いは何だろうか。

 それは7、8日の両日、米カリフォルニア州ロサンゼルス近郊の保養施設で予定されているオバマ米大統領と習近平国家主席の会談に向けた中国からのサインだろう。

 TPPなどの貿易交渉は、純粋に経済的な動機から行われるのではない。同じ価値観を共有していることを示すために、安全保障などの非経済的で政治的なイメージ作りの観点から進められる。

 米中トップが会談するにあたり、中国側は、尖閣諸島問題や南シナ海の領有権問題で米国が関与してくるのを牽制(けんせい)したいところだ。一方、米国は巨大な自由貿易圏の構築のために、GDP(国内総生産)世界第2位の中国を取り込みたいと考えている。

 中国はこれまで自国経済への影響からTPPへの参加は消極的だった。TPPでは貿易だけでなく投資の自由化も含まれるが、貿易・投資自由化は何としても避けたいところだ。貿易・投資自由化は、OECD(経済協力開発機構)加盟国の条件であることからわかるように「先進国」の証しであるが、経済的にいえば、変動相場制がほとんど不可避になる。

 というのも、国際金融のトリレンマ(三すくみ)、つまり「固定相場制」「独立した金融政策」「自由な資本移動」の3つは同時に達成できず、せいぜい2つしかできないからだ。貿易・投資自由化によって自由な資本移動を確保すると、固定相場制と独立した金融政策の2つのうち1つしか選べないが、国内経済の安定のために、金融政策を選ぶしかなくなる。このため変動相場制になるわけだ。

 今の中国にとって、貿易・投資自由化、変動相場制の採用は、自国経済だけでなく一党独裁の政治体制まで左右しかねない。そもそも一党独裁の政治体制にとって、多様な価値観を前提とする貿易・投資自由化と変動相場制という自由主義経済は両立できるかどうかさえ明らかでない。自由主義経済への方向は中国にとって注意すべきところなのだ。ただ、米中トップ会談が5月下旬に急遽決まったものだから、中国としてTPPへは参加のそぶりをみせて、何か会談の成果を引き出したいのだろう。

 米国としても、せっかく中国とトップ会談をやりながら、中国による米国防産業などへのサイバー攻撃を牽制するだけでは物足りない。中国が貿易・投資自由化の方向に乗ることができれば、米国経済界は評価するだろう。オバマ政権としても、中国重視の方向が間違っていなかったといえるわけだ。

 中国がTPPへの参加に前向きのサインを出したが、TPPそのものが貿易・投資自由化なので、実際に参加することは難しいだろう。むしろ米国がそのサインにどのように反応するのかが注目される。尖閣諸島問題や南シナ海の領有権問題で、中国の姿勢を積極的に容認することはないだろうが、スルーすることはありえる。その場合、日本としてどう対応すべきか考えておいたほうがいい。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

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