武士道を今に伝える無外流居合

2013.08.15

 浅田次郎の小説『一刀斎夢録』で描かれる新撰組三番隊長斎藤一は、「出会いがしらの一撃で勝負を決する剣」の使い手である。池波正太郎の『剣客商売』や山本周五郎の『雨あがる』の主人公もまた「無外(むがい)流」の達人であった。

 無外流は、1693(元禄6)年、辻月丹(げったん)資茂(すけもち)によって創始された剣の流儀である。

 月丹は13歳から京都で山口ト真斎に剣術を学び、江戸に出て山口流の道場を開く。一方で麻布吸江寺に19年に亘って参禅、「一法実無外」という偈(げ=梵語の詩)から自らの剣術を「無外流」と称した。居合の流派であった自鏡流に学んだ月丹は自鏡流居合術を併伝するようになり、やがて無外流居合と呼ばれるようになった。

 現在の「無外流居合兵道」は、11代宗家中川士龍申一が古伝の居合の技を精選し編纂(へんさん)し直したものという。中川士龍から免許を授かった神道夢想流という杖道の師範でもあった塩川寶祥(ほうしょう)照成(てるしげ)師範の直弟子となったのが新名豊明(玉宗)さん(64)である。

 「塩川先生は稽古のとき“新名、切っ先を5ミリ下ろせ”なんていうのです。剣を振り下ろしたとき、切っ先が5ミリ高いと。それほど厳しい先生」だった。

 10代から合気道のほか各種武道を学び、成蹊大学に入って塩川師範の許に入門。三菱重工業時代には、全三菱合気道同好会で杖道、居合道の指導者としても活躍した。

 1987(昭和62)年、東京都杖道連盟を創設。94(平成6)年、武道教授団体「吸毛会」を設立し、無外流の裾野を広げた。

 99(平成11)年、無外流宗家を継承。2004(平成16)年には、自ら無外流明思派を創設して宗家となる。08(平成20)年に財団法人無外流を設立する。

 江戸時代、大名32家、直参156人、陪臣930人の弟子を擁した無外流は、現在、世界に1200人(国内約900人)を超える弟子を抱える。

 「“抜き即斬”が居合です。居合の本義は抜刀の一瞬にあり」といい、その術を身につけるために実際に物を斬る稽古が無外流居合の特長である。

 “術”の先にあるのが“道”。「道は術の中にあり」として、仁・義・礼・智・信の「人としての道を外してはならない」と説く。まさに“偈”である。 (谷口和巳)

 ◆財団法人無外流 東京都千代田区神田東松下町29の6 (電)03・6206・8623

 ■谷口和巳(たにぐち・かずみ) 団塊世代の編集者。4つの出版社を転籍、19の雑誌に携わり、編集長として4誌を創刊。団塊世代向け月刊誌『ゴーギャン』元編集長。『女優森光子 大正・昭和・平成−八十八年激動の軌跡−』『帝国ホテルの流儀』(共に集英社)などの書籍も手掛ける。

 

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