七宝を伝承 東京五輪では選手村出店 安藤七宝店

2013.09.19

 七宝(しっぽう)焼の技法は中近東に生まれ、シルクロードから中国、朝鮮と伝来、日本には桃山時代末期に伝わったといわれている。金、銀、銅、鉄などの金属製の基材に釉薬を乗せ、約800度の高温で焼成することによって、融けた釉薬(ゆうやく)がガラスやエナメルのように美しい色彩を施す。

 安藤七宝店は、1880(明治13)年、名古屋で安藤重兵衛が創業。東京支店は1890(明治23)年に開設した。

 宮内省御用達となった1900(明治33)年に開催されたパリ万博に出展して金牌を受賞。1904(明治37)年のセントルイス万博で名誉大牌、1906(明治39)年のミラノ万博ではグランプリを獲得した。

 欧米を中心に広まったジャポニズム文化のなかで、日本特有の工芸品として、その巧妙さ、その精美さにおいて七宝の名を世界的に高めた。57(昭和32)年、文化財保護委員会が七宝を無形文化財に指定、同時に安藤七宝店の工場が無形文化財選定工場に認定された。

 49年前の東京オリンピックでは代々木の選手村に出店して、銀に七宝を施した五輪マーク入りの5色のスプーンセットなどを販売した。

 「“ディスカンテ、ディスカンテ”と値切られたイタリアの選手を思い出します」と述懐するのは、いまも東京支店に勤務する北村信二さん(73)。まだ入社3年目だった。

 「先日、早稲田大学の博物館に行ったのですが、大隈重信公所蔵の2メートルほどもある紺地に牡丹と藤の一対の七宝の壺があって、それは素晴らしいものでした」といいながら、伝統工芸が先細りの「現在ではそんな大きな壺を焼ける釜がないのでは」と眉をひそめる。

 北村さんの出勤は月曜と木曜の週2回だけだが、この曜日は「明治の頃の七宝だが」などとその価値を鑑定してほしいと全国の七宝愛好家が北村さんに会いに来るという。「技術の伝承と保存が目的と使命」という安藤七宝店133年の社風が、北村さんを七宝の目利き第一人者にした。

 「働いていると、緊張しますね。この適度な緊張感が健康の秘訣」と2回目の東京オリンピック体験が「楽しみ」な北村さんである。

 店内では、流行のタック・ブローチ2500円前後から数百万円の花瓶まで、七宝の魅力をたっぷりと堪能したい。  (谷口和巳)

 ◆安藤七宝店東京支店 東京都中央区銀座5の6の2(電)03・3572・2261

 ■谷口和巳(たにぐち・かずみ) 団塊世代の編集者。4つの出版社を転籍、19の雑誌に携わり、編集長として4誌を創刊。団塊世代向け月刊誌『ゴーギャン』元編集長。『女優森光子 大正・昭和・平成−八十八年激動の軌跡−』『帝国ホテルの流儀』(共に集英社)などの書籍も手掛ける。

 

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