皇室が愛用する16本骨傘の老舗「前原光榮商店」

2013.10.10

 『雨に唄えば』や『シェルブールの雨傘』など欧米では雨はロマンチックな映画の素材になるが、日本ではそうはいかない。

 「日本の雨は重たいからです」というのは、洋傘づくりの専門店である前原光榮商店3代目・前原慎史さん(39)だ。

 「欧米の軽い雨は濡れても爽やかですが、日本の雨は質量が重く濡れると不快に感じる」。だから、日本では「傘は雨をしのぐ道具」なのである。加えて「傘は壊れやすいもの」ともいう。

 そんな当たり前のことに取り組み続けて65年、「前原の傘はかくあらねばならない」というマインドを育み、クオリティーの高い「一生もの」の傘を生み出してきた。

 前原光榮商店は、1948(昭和23)年に前原さんの祖父、前原光榮が東京の傘メーカーから独立創業した。

 「道具」としての優れた傘づくりにこだわり、普通8本の骨組みを10本、12本と増やし16本骨傘を完成させた。

 16本骨の傘はいうまでもなく強度が増す。さらに、親骨の長さは8本骨傘と同じながら、開くと面積が大きくなり、より雨をしのげる。オーソドックスな8本骨傘より真円に近くなるフォルムも美しい。露先からの雨垂れが身体にかかりにくいという特性もある。

 63(昭和38)年から、皇室御用達となる。

 生地はかつて甲斐織物の産地であった山梨県の都留で織られ、傘骨を組むのは東大阪の職人だ。織り上がった生地と組み終えた傘骨は、東京と横浜にあるこの道50年の加工職人に引き継がれる。木を曲げる、塗るなど工芸の技が光る手元も東大阪の職人の手による。加工された傘本体と手元が本店に集められ、最後の手元取り付け作業が行われる。

 年間生産数は約2万本。前原さんは、その1本1本すべてをチェックする。

 「“傘”という字のなかにある“人”の文字は、生地、傘骨、加工、手元の4つの工程を受けもつ匠たち」を指し、どこかに妥協したりすると、たちどころに「この傘は前原っぽくない、と職人さんから言われたり」するほど匠たちとの信頼関係は厚い。

 前原さんお勧めの紳士用16本骨傘は、手元がエゴノキで重さ615グラムのピンストライプ傘1万8900円。この1本で秋の長雨も楽しくなる。 (谷口和巳)

 ◆前原光榮商店 東京都台東区三筋2の14の5 (電)03・3863・4617

 ■谷口和巳(たにぐち・かずみ) 団塊世代の編集者。4つの出版社を転籍、19の雑誌に携わり、編集長として4誌を創刊。団塊世代向け月刊誌『ゴーギャン』元編集長。『女優森光子 大正・昭和・平成−八十八年激動の軌跡−』『帝国ホテルの流儀』(共に集英社)などの書籍も手掛ける。

 

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