江戸前の流れをくむ創業150年の老舗「割烹とよだ」

2013.10.17

 弱冠16歳の豊田米吉が江戸・日本橋に鮨の屋台を出したのは、1863(文久3)年。第14代将軍徳川家茂の時代である。

 江戸無血開城を成し遂げ、西南戦争で敗れ、わずか49歳で自刃した西郷隆盛が、しばしば米吉の屋台に立ち寄り「赤ベロベロしょっぱづけ(まぐろのづけ)」を好んで食べたのだそうだ。

 2代目喜太郎から姓を橋本に改名。喜太郎の妻てつは、「阪妻(ばんつま)」こと阪東妻三郎の母はるの実姉である。3代目橋本豊吉、4代目橋本敬会長のもと、料理長を兼ねる橋本亨さん(51)が5代目を継ぐ老舗割烹「とよだ」は今年で創業150年。

 「親父(敬さん79歳)は左利きだったものですから、料理人にはならず経営に徹した」と語る若旦那の亨さんは、高校を出てすぐに浅草の老舗料亭「草津亭」で7年間修業。当時の同料亭料理長の宮澤退助から、料理人に「大切なのは心」であり「気持ちを込められなければ料理をする資格はない」と教えられた。

 1993(平成5)年3月から1年間、在独日本大使館公邸の離れに住み込みの公邸料理人として渡独する。まだ東西ドイツが統一される以前のことである。

 こうした経験は、亨さんをして世界に誇れる豊かな日本文化をあらためて見直すきっかけともなった。学生時代から続けていた剣道に加えて茶道を始めたのはこの頃である。また十数年前から仕事の合間をぬって居合の道場にも通う。

 亨さんは子供の頃、「おやつが鯛の刺し身だったり、祖母からは煮魚の食べ方を教わったり」して育ち、修業時代に身に付けたおもてなしの「心」と旬の色味を吟味できる「目」と「舌」を養うことができたのである。

 2階と3階に掘りごたつと椅子席の個室があるが、ここはやはり1階カウンター席で5代目が自ら握る片歯刃金の包丁さばきを見たいもの。奥行き65センチという木目調の広い9人掛けカウンターでいただく一品一品が、江戸時代から続く歴史の一端を垣間見るようで、実に味わい深い。(谷口和巳)

 ◆割烹とよだ 東京都中央区日本橋室町1の12の3 (電)03・3241・1025

 ■谷口和巳(たにぐち・かずみ) 団塊世代の編集者。4つの出版社を転籍、19の雑誌に携わり、編集長として4誌を創刊。団塊世代向け月刊誌『ゴーギャン』元編集長。『女優森光子 大正・昭和・平成−八十八年激動の軌跡−』『帝国ホテルの流儀』(共に集英社)などの書籍も手掛ける。

 

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