「耳で観る歌舞伎」命名し普及の一役担う イヤホンガイド解説者

2013.10.24

 イヤホンガイドが歌舞伎座に初めて登場したのは、1975(昭和50)年11月4日、午前11時公演の舞台からである。

 当時のポスターには「歌舞伎の筋や約束事、配役などが、舞台の動きに合わせてイヤホンから同時解説されます。観劇の邪魔にならず、舞台が何倍も楽しくなります」と説明されていた。小型のイヤホン付き受信機の貸し出し料金は300円。利用者は、たった7人だったという。

 それから38年。この画期的な舞台解説システムは、国立劇場、新橋演舞場にも導入され、やがて全国の劇場へと広がった。

 82(昭和57)年3月の歌舞伎座公演から英語版もスタートした。

 「歌舞伎は、日本人が世界に誇れる世界無形文化遺産です」というのは、イヤホンガイドの開始時から解説者を務める演劇研究家の塚田圭一さん(79)。

 祖父の影響で幼少の頃から歌舞伎に魅せられ、早大文学部演劇学科の卒論は「小芝居」。いずれは「大学の教授になるつもりだった」のが劇団に籍を置き、58(昭和33)年、フジテレビの開局前に入社、主にドラマの演出で活躍した。のちに共同テレビジョンの社長、会長を歴任、平成中村座海外公演の実行委員長も務める。

 イヤホンガイドは、各劇場で演目が発表になると、解説者とオペレーターが人選される。解説者は台本をチェックして独自の解説文を執筆する。

 「歌舞伎座の11月公演『仮名手本忠臣蔵』では、120〜130カ所ほどの解説に」なるようだ。これをテープに収録。各舞台ごとにオペレーターの手によって送り出し(再生)される。上演中、オペレーターの目は台本を追い、耳で役者の台詞を聴き、手元でミキサーのボタンを操作する。だんまりのように台詞のない芝居の時は、役者の振りを見ながら解説を送り出す。

 筋や役柄以外にも、物語の歴史や背景、言葉の意味や時代の習慣、衣装や鬘(かつら)の名前など、解説によって舞台がよりよく理解できるのである。

 塚田さんはこれを「耳で観る歌舞伎」とキャッチフレーズにした。

 「1行20字4秒が目安」の解説文の中に、「歌舞伎をもっと普及させたい」「歌舞伎の観客をもっと増やしたい」という塚田さんの強い思いが込められている。

 いわば「江戸時代の通訳」の仕事の真骨頂なのである。(谷口和巳)

 ■谷口和巳(たにぐち・かずみ) 団塊世代の編集者。4つの出版社を転籍、19の雑誌に携わり、編集長として4誌を創刊。団塊世代向け月刊誌『ゴーギャン』元編集長。『女優森光子 大正・昭和・平成−八十八年激動の軌跡−』『帝国ホテルの流儀』(共に集英社)などの書籍も手掛ける。

 

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