毎年11月は「乳幼児突然死症候群(SIDS)」の対策強化月間。聞き慣れない人も多いかもしれないが、元気な赤ちゃんが突然死してしまう病気。近年では年間150人前後が亡くなっている。対策の基礎知識を知っておこう。
【診断は解剖が必須】
国内での発症頻度は6000−7000人に1人と推定され、発症年齢は大半が生後2−6カ月。必ず睡眠中に発症する。
日本SIDS・乳幼児突然死予防学会理事で川口市立医療センター(埼玉)・新生児集中治療科の山南貞夫医師が説明する。
「診断は、状況調査で窒息死や外因死でなく、解剖して急死の原因になる基礎疾患がないことを確認します。突然死でも解剖されない場合があるので、実際の発症数はもっと多いはず」
発症は、冬季、早朝から午前中に多いという。
【脳の防御反応が未熟】
原因はまだ分かっていないが、生まれつき素因を持つ子に危険因子が重なり、そこに何らかの刺激が加わると発症すると考えられている。
「大人でも赤ちゃんでも普段から深い眠りの時に呼吸が止まることがあるのですが、通常は脳幹部の防御反射で覚醒して呼吸を再開します。素因は、脳幹部の呼吸中枢の未成熟と考えられています」
危険因子は、(1)うつぶせ寝(2)周囲の喫煙(3)母乳で育てていない、の3つが重要項目。
「うつぶせ寝が悪いのは呼吸がしにくいのではなく、眠りが深くなり、覚醒反応が遅れるからです。粉ミルクも母乳よりも眠りが深くなります」
発症のキッカケは、まったく何もないこともあれば、軽く風邪をひいていたり、身動きが悪くなるほど厚着をさせたり、体温が上がり過ぎることなどがあげられる。
【自分を責めないで】
乳幼児の顔色が悪く、脈がない、呼吸をしていなければ、早急に救急車を呼ぶと同時に蘇生(そせい)を試みること。
「乳幼児の蘇生法は呼吸が大切になる。生後間もない場合、大人の口で子供の鼻と口を覆い空気を送る。生後2−3カ月なら、子供の口を閉じて鼻から空気を送り、心臓マッサージを繰り返します」
他院と比べて解剖率が高い同院では、1歳以下の急死で運ばれてくる年間3−4件のうち、1−2件はSIDSの発症が占めるという。
「SIDSによる突然死はあくまで病気で、誰のせいでもありません。ご家族は決して自分たちを責めないでもらいたい」
この病気の詳しい情報は「NPO法人 SIDS家族の会」のホームページを見るといい。
《SIDSの素因と危険因子》
【素因】
脳幹部呼吸中枢の未成熟(どの子供が素因を持つか分からない)
【注意する3大危険因子】
(1)うつぶせ寝をさせない⇒眠りが深くなり、覚醒反応が遅れる
(2)妊娠中・出産後の喫煙はやめる⇒酸素不足で脳の発達が遅れる
(3)できるだけ母乳で育てる⇒母乳と粉ミルクでは母と子の睡眠パターンが異なってくる