カステラ職人「森幸四郎」ブランドの“芸術作品” 銀座文明堂

2013.12.12

 「今でも焼くのは難しい」。そう訥々と話すのは、銀座文明堂・最高技術顧問の森幸四郎さん(77)である。

 1952(昭和27)年、森さんが17歳になった年、長崎の島原から文明堂に入社するために上京。当時、現在の銀座5丁目にある本店とほぼ同じ場所にあった文明堂は、1階が店舗で2階が工場、3階が従業員寮になっていた。森さんのカステラ作りは寮生活と同時に始まった。

 「最初は、どら焼き(三笠山)から焼き始めた」という若き日の森さんは「朝5時に起き、夜の10時頃まで働きづめ」だったという。「徒弟制度が当たり前で、見て覚えろ、という時代でした」と回想する。

 文明堂は1900(明治33)年、中川安五郎が長崎で創業。東京進出は、14(大正3)年に上野で開かれた博覧会での出張製造販売が第一歩だった。25(大正14)年には宮内庁御用達となり、銀座店が開店するのは39(昭和14)年である。

 カステラは、16世紀末にスペインからポルトガル船で長崎に伝来した。

 江戸時代には五味を含むといわれ珍重された高級品だったが、製法の難しさゆえにいつしか消えてしまった幻の味「五三(ごさん)カステラ」を、森さんは故事来歴をもとに復元させることに成功した。

 この功績により、94(平成6)年に農林水産大臣賞を受賞、「フードマイスター」の称号を授与される。

 2007(平成19)年、大丸東京店に森さんの名を冠した店「森幸四郎」が誕生。

 ここで販売する「森幸四郎のどらやき」(1個210円)、復元した五三カステラの「森幸四郎のかすてら」(1本桐箱入り2100円)は、共にしっとり、ふっくらとして艶があり、和文化に昇華して味わい深い。

 カステラを焼くのは「一釜10斤」単位で、手で裏返す力仕事でもある。10斤とは、縦50センチ、横54センチ、厚さ5・5〜6センチの大きさで、約6キログラムの重さ。それを1斤単位(10センチ×27センチ)に切る専用包丁も約2キログラムの重さがある。

 森さんの手は、がっしりとした厚みのある掌に5指は太く、60年の歳月が刻み込まれた、まさに職人の手だ。

 弟子の育成と共に、その手で焼き上げる練達の“作品”をご賞味あれ。

 ◆銀座文明堂本店 東京都中央区銀座5の7の10 (電)03・3574・0002

 ■谷口和巳(たにぐち・かずみ) 団塊世代の編集者。4つの出版社を転籍、19の雑誌に携わり、編集長として4誌を創刊。団塊世代向け月刊誌『ゴーギャン』元編集長。『女優森光子 大正・昭和・平成−八十八年激動の軌跡−』『帝国ホテルの流儀』(共に集英社)などの書籍も手掛ける。

 

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