「富士山噴火しない」はあり得ない 前兆なしに噴火するケースも

2013.12.13

 富士山の最後の噴火は1707(宝永4)年のことだった。以後、300年以上も噴火していない。

 噴火を繰り返してきた富士山でこれほど長い休止を経過したことはない。例えば平安時代は約400年間だったが、その間に10回も噴火している。

 地球物理学から見れば、富士山がこのまま将来も噴火しないことはあり得ない。富士山の下には太平洋プレートがフィリピン海プレートと衝突して潜り込んだときにできるマグマが次々に生まれていて、これがやがて噴火して出てくることは明らかだからである。

 この2つのプレートの衝突は富士山の直下だけではない。そこから南へ1000キロ以上も続いていて、マグマも富士山の下から帯状に南へ続いている。11月から噴火を続けている小笠原・西之島の新島も、このマグマが上がってきたものなのである。

 マグマが地下で南北に伸びる帯状につながっているから、そこから上がってきて噴火する火山も南北の列になる。富士火山帯だ。1989年に伊豆半島の伊東の沖で海底噴火した手石海丘も、伊豆大島も八丈島も、この火山帯に属する火山なのである。三宅島で4月に火山性の群発地震が起きたのも、この火山帯の活動の一環である。

 ところで、富士山がいずれ噴火することを予想して、もちろん、それなりの観測網が敷かれている。残念ながら地下のマグマの量や動きを見ることは現在の科学ではできない。それゆえ他の活動的な火山と同様、付近で起きる小さな地震の観測や、山体膨張の観測である。

 このうち、富士山では特有の地震が観測されている。「低周波地震」だ。他の地震とは違って低い周波数成分が多い地震である。この地震はマグマの動きと関連している。他の火山で観測されることもあるが、富士山では地下15−20キロ、つまり富士山の高さの5倍もの深さのところで起きる。

 この低周波地震はいままでも増減を繰り返してきた。例えば2000年頃にはずいぶん増えて科学者たちを緊張させたが、何事もなく収まってしまった。

 他方、山体膨張はほぼ一様に進んでいる。富士山が膨らんでいるわけだ。これは地下のマグマが増えているためだと思われている。実はこの山体膨張が06年からわずかながら加速しているのは、とても気になる。

 このように富士山は「監視下」にある。しかし安心はできない。最大の問題は、最後の噴火が300年以上も前だったから、噴火の前に何が起きたかが分かっていないことなのである。つまり、小さな地震がどこまで増えたら、あるいは山体膨張がどこまで進んだら噴火するのか、という限界が分かっていないことなのだ。

 福島県の磐梯山では00年の夏に地震が増えて1日に400回を超えた。しかし結局は噴火しなかった。他方、何の前兆もなしに噴火した火山も多い。富士山も事前に「適切な予兆」を出してくれるとはかぎらないのである。

 ■島村英紀(しまむら・ひでき) 武蔵野学院大学特任教授。1941年、東京都出身。東大理学部卒、東大大学院修了。理学博士。東大理学部助手を経て、北海道大教授、北大地震火山研究観測センター長、国立極地研究所所長などを歴任。『直下型地震 どう備えるか』(花伝社)など著書多数。

 

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