創業129年「教文館」 本が売れない時代の老舗書店の哲学

2014.01.16


渡部満さん【拡大】

 「基督教に関する図書及び修養に資する一般図書の出版販売」−これは教文館の定款第1章に記載されている1項である。

 2005(平成17)年5月、全国の「書店の灯を消すな」と叱咤(しった)した先代、中村義治氏のあとを継ぎ、9代目社長に就任した渡部満さん(62)は、この「修養に資する」という文言に注視した。

 「修養に資するとはどういうことなのか?」。導き出した結論は「本は、教養というレベルではなく、人格形成に役立つものでなければならない」というものであった。「元々、本とはそういうものだった」と渡部さんは過去形で話す。本が売れない時代にあって、なお「(本の)コンテンツの質が低下している」と危惧するからである。

 「人文関係の本は売り上げが厳しい」ことを承知の上で、それでも「良書」の品ぞろえにこだわる。これが教文館の代々受け継がれてきた「精神であり使命」だとクリスチャンの渡部さんは明言した。

 教文館は、1885(明治18)年「メソヂスト出版舎 内外書肆」として創業した。1896(明治29)年に「教文館 内外書肆」となり、1906(明治39)年に現在の場所に移転。関東大震災で焼失したが、33(昭和8)年に地上9階、地下2階の当時世界的に流行したアール・デコ調のビルが竣工(しゅんこう)して、まる80年になる。

 1階は雑誌売り場で、バックナンバーも扱う。2階は和書。場所柄、銀座に関する書籍を一堂に集めた銀座コーナー、歌舞伎、伝統芸能の専用棚も設ける。3階はキリスト教書。4階はヘブライ語でぶどう園(カレム)の泉(エイン)を意味する「エインカレム」という教会関連用品の売り場とモダンなカフェ。5階は洋書。

 そして、6階の「ナルニア国」はロングセラー本を基に絵本と児童書の専門フロア。子供の本の新刊はほぼ全て並ぶのが「ナルニア国」の特長でもある。新刊の中からスタッフが選んだ年度版のブックガイド『2013年に出た子どもの本』は3月に刊行される。「子どものためのおはなし会」や絵本の原画展など多彩な催事も少子化とは無関係に行う。

 日本人の「知性と文化」を守るのが「本屋の役割」だと渡部さんはいう。この言葉、出版社には耳が痛いか。 (谷口和巳)

 ◆教文館 東京都中央区銀座4の5の1 (電)03・3561・8446

 ■たにぐち・かずみ 団塊世代の編集者。4つの出版社を転籍、19の雑誌に携わり、編集長として4誌を創刊。団塊世代向け月刊誌『ゴーギャン』元編集長。『女優森光子 大正・昭和・平成−八十八年激動の軌跡−』『帝国ホテルの流儀』(共に集英社)などの書籍も手掛ける。

 

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