松本清張が愛用の万年筆…今も 伊東屋

2014.01.23


岩井正さん【拡大】

 銀座の伊東屋は居心地のいい店である。「1日中いても飽きない」と客の多くは口にする。それは、およそ15万点のアイテムが一人一人の想像力をかきたててくれるからだ。

 その土台を創ったのが、1904(明治37)年「和漢洋文房具 STATIONERY」と看板を掲げた創業者の伊藤勝太郎である。

 1910(明治43)年発行のカタログに掲載されたほとんどの商品が今でも店頭に並んでいる。鉛筆、万年筆、ノート、アルバム、消しゴム、糊など原料が変わっても、100年前と同じものをオフィスや書斎の机上にみることができる。

 どこにもある文房具だからこそ、「伊東屋がいい」と思うどこにでもない「上質のものをそろえる」というのは、取締役販売本部長の岩井正さん(56)である。

 1919(大正8)年に伊東屋で開催された「欧米各国万年筆展示会」は、毛筆からペンの時代への転換を示唆する啓蒙(けいもう)活動でもあった。

 横浜の外国商館や築地の外国人居留地に通い商品を仕入れていた勝太郎は、1922(大正11)年「欧米先進国の実情に接したい」と英国の旅行会社トーマス・クックの7カ月にわたる世界1周旅行に参加する。創業時から掲げていた「和漢洋文房具」の看板は、当初から日本、東洋、西洋すべての文房具を商うという壮大なビジョンを勝太郎が描いていたことを意味した。

 世界中の文房具に直に手を触れて、客が手にしたときの心の動きを想像したであろう、そのDNAは現5代目・伊藤明社長まで代々受け継がれている。

 “書くものと書かれるもの”−ペンとノートは文房具の原点で、クリエイティビティの基本である。特に伊東屋は、万年筆への造詣が深い。書き手の心の襞(ひだ)が文字に表れて、文章が潤(うるお)うのである。

 松本清張がモンブラン・マイスター・シュテュックを愛用し、坪内逍遥は伊東屋製の原稿用紙を使った。

 そのこだわりは、「妥協でものごとを決めない」伊東屋人士を育成し、みんなが「同じ方向を向いている」と岩井さんがいうように、創業者・伊藤勝太郎の理想そのものであった。

 2015年夏、新しく生まれ変わる伊東屋は、次にどんな未来を見せてくれるだろうか。  (谷口和巳)

 ◆銀座・伊東屋(仮店舗) 東京都中央区銀座3の7の1 (電)03・3561・8311

 ■たにぐち・かずみ 団塊世代の編集者。4つの出版社を転籍、19の雑誌に携わり、編集長として4誌を創刊。団塊世代向け月刊誌『ゴーギャン』元編集長。『女優森光子 大正・昭和・平成−八十八年激動の軌跡−』『帝国ホテルの流儀』(共に集英社)などの書籍も手掛ける。

 

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