アルゼンチンと中国、最大の懸念材料は不透明な統計

2014.01.31

 筆者は1998年から2001年までプリンストン大学にいたが、そのとき、同僚だったポール・クルーグマン教授の言葉が忘れられない。

 「日本とアルゼンチンは、とても興味深い研究対象の国だ。ともに経済政策がめちゃくちゃで、病理的な状況だ。そうした極限状態になると、経済理論が役立つからね」

 当時、日本はデフレになっていたが、彼は拡張的な金融政策をなぜ実施しないのかと筆者に何度も尋ねた。筆者は日本に帰国後、彼の主張するような金融政策をいろいろな人に伝え、ようやくアベノミクスでインフレ目標が導入され、経済に光明が差してきた。彼の日本経済を見る目も変わり、今ではアベノミクスの金融緩和を高く評価している。

 一方、アルゼンチンは90年代に猛烈なインフレに見舞われていた。そこで、自国通貨をドルにリンクさせて発行した。これは通貨のドル化といわれる政策で、自国通貨放棄、金融政策放棄でもある。これでインフレは収まったが、通貨高になって景気が落ち込み、01年12月に公的対外債務不履行に追い込まれた。デフォルトになるくらいなら、通貨安になったほうがましだった。

 その後、2000年代のインフレ率は90年代に比べればまだまともだが、それでも公式統計で1桁後半のインフレだった。00年代の初めの頃、アルゼンチン中央銀行でも、インフレ目標の機運が高まっていたが、なにしろ公式統計があてにならない国なので、インフレ目標はうやむやのままだ。

 2010年以降、公式統計でのインフレ率は10%程度であるが、民間推計では20〜25%程度と倍以上も違う。ここまで統計がいい加減だと、政策以前の問題である。かつて、クルーグマン教授は、このようなアルゼンチンと日本を同じに見ていたのかと思うとぞっとする。

 実際に高インフレだと、アルゼンチンの通貨ペソの下落は当然のことだ。アルゼンチンが買い支えても、下落せざるを得ない。

 一方では、中国の影の銀行(シャドーバンキング)問題についても懸念する見方が強まっている。ここでも、実態がよくわからない。

 中国のシャドーバンキングは2種類ある。銀行がある企業に資金を貸し付け、銀行は資金需要者にその企業を紹介し、資金需要者はその企業から高い金利で資金を直接借り入れる「委託融資」と、貸出債権を小口化した「理財商品」だ。

 どちらも、資金需要者には地方政府が傘下に抱える投資会社「融資平台」が多い。融資平台は、調達した資金を地方政府の指示に沿って道路建設やダム工事などのインフラ開発に使っている。そこに地方の「隠れ借金」があり、それが不良債権化しているようだ。ところが、その統計はほとんどわからず、不良債権の実態は闇の中だ。

 いずれにしても、問題がどこまで大きいかもわからず、その不透明感は不気味だ。それらの問題が炸裂(さくれつ)すると、日本経済への影響は避けられないだろう。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

 

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