新型万能細胞「STAP細胞」をめぐる問題で、論文の筆頭著者である理化学研究所(神戸市)の小保方(おぼかた)晴子・研究ユニットリーダーらが、論文撤回の意向を示し、理研は14日午後、都内で謝罪会見を開いた。世紀の発見から約1カ月半での撤回騒動は、小保方氏はもとより理研の責任も免れない。専門家は「今回の問題は、理研の特徴である『前のめり』の悪い面が出てしまった」と指摘する。
世界から注目された革新的研究が取り消しの可能性…。前代未聞の事態を受け、会場にはカメラ30台以上、報道陣150人以上が殺到した。
会見の冒頭、野依(のより)良治理事長が「論文の作成の過程で重大な過誤があったことははなはだ遺憾で、論文の取り下げを勧めることも視野に入れて検討しています」と謝罪。小保方氏ら共著者も、論文取り下げの意向を示した上で「心からおわびする」との謝罪を記した文書を発表した。
STAP細胞は、1月末に英科学誌ネイチャーに掲載された2本で、日米の計14人の共著。取り下げには原則的に著者全員の同意が必要で、今後、同意を得る作業を進める。
13日発売の週刊文春によると、同誌のインタビューを受けた共同研究者の若山照彦・山梨大教授は、小保方氏から一度電話があったとし、「泣きながら『ご迷惑をおかけすることになるかもしれません』と言ってました」と明かしていた。
世紀の発見から撤回へ。理研を舞台にしたこの発表は何だったのか。
「理研は、才能ある人や必要な技術をあちこちから集めて、研究を成就させてきた。若い人であっても才能があれば、どんどんやっていこうという姿勢。医学界を描いた小説『白い巨塔』とは反対で、この体制こそが数々の成果を生んできた」
科学ジャーナリストの大朏(おおつき)博善氏は、理研の果たしてきた役割は大きいと評価する。