「双子の赤字」で増税へ誘導する財務省 経済成長無視の子供だまし

2014.03.15

 1月の経常赤字が過去最大となったのを受けた報道で、財政赤字との「双子の赤字」という表現がメディアで相次いだ。

 財政制度等審議会で財務省が懸念を表明した、と紹介されているのだが、同審議会は「御用審議会」の典型で、かつては官僚の作った進行メモに従いながら、委員が時間通り発言していた。つまり、財務省が「双子の赤字」を強調しているということができる。

 しかし、本コラムでかつて指摘したように、経常赤字は別にたいしたことではない。

 「貿易で儲かる=黒字、貿易で損する=赤字」という、個別企業の業績について使われる言葉を、そのまま国の貿易黒字・赤字と考えてしまっている人が多いかもしれない。しかし、貿易収支または経常収支の黒字を「得」なこと、赤字を「損」なことと考えるのは経済学では初歩的な誤りで、それを「重商主義の誤謬(ごびゅう)」という。

 もちろん、経常赤字が際限なく大きくなるのは問題だが、国際収支論によると、経常赤字は資本収支の黒字と表裏一体であり、海外からのファイナンス(資金調達)に支障がなければ、経常赤字は問題とはならない。

 一般的に経常収支の黒字・赤字は国にとって得でも損でもない。カナダの経常収支は100年以上にわたり、ほとんどの年において赤字だが、立派に発展してきた。アイルランド、オーストラリア、デンマークなどの経常収支は第二次大戦以降、だいたい赤字だが、それらの国が「損」をしてきたわけでもない。

 次に財政赤字である。しばしば「借金1100兆円」という数字でおどろおどろしく語られるが、これは政府のバランスシート(貸借対照表)の「右側」だけの議論だ。「左側」の資産は650兆円程度ある。資産負債差額が重要だが、そのGDP(国内総生産)比は100%にはならず、米国と同程度だ。

 このため、日本が直ちに財政破綻するとは全く思われていない。その証拠に、国の安心度を表すCDS(クレジット・デフォルト・スワップ)レートは、世界でも10位程度に位置する。

 もっとも、国債発行による収入や債務の元本返済や利払いの支出を除くプライマリー(基礎的財政)収支が悪化すると、財政は徐々に危うくなる。プライマリー収支を改善するには、経済成長が最善の手段である。ちなみに、筆者が仕えた小泉純一郎政権と第1次安倍晋三政権では、経済成長と少しの歳出カットによって、大きな増税なしでもプライマリー収支の赤字は28兆円から6兆円へと22兆円も改善した。

 財務省は「双子の赤字」という言葉で、目の前に起こっている経常収支赤字が大変なことだと思わせ、その上で財政赤字も大変だというイメージを植え付け、最後はやはり増税というストーリーを考えているのだろう。

 経常収支赤字は経済成長にはたいした問題ではない。また、財政赤字の解決策は、実は増税ではなく、経済成長であることを忘れなければ、こんな子供だましには引っかからない。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

 

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