「輸出戻し税は大企業の恩恵」の嘘 消費増税論議の障害になる

2014.04.05

 消費税率引き上げに絡み、「輸出関連の大企業は輸出戻し税の恩恵を受ける」という論説が一部にある。大企業が下請けの中小企業に負担を押しつけているという話が付いてくることも多い。そもそも輸出戻し税とはどういうものなのか。そして輸出企業が恩恵を受けるということがありえるのだろうか。

 これについては、共産党議員が国会で質問したことがあるが、完全にミスリードであることが明らかになっている。結論から言えば、こうした仕組みはどこの国にもあり、輸出企業がこの仕組みで儲けているということはない。もし本当にこの仕組みがおかしいなら、国際問題になるだろうが、まったくなっていないことからもわかる。

 消費税の仕組みから振り返っておこう。企業の支払い消費税は、税率×(売り上げ−仕入れ)である。これは、「税率×売り上げ−税率×仕入れ」となり、消費者が売上時に払い企業が受け取った消費税から、企業が仕入れ時に払った消費税を差し引いたものとも言える。消費税はすべて消費者に転嫁されるので、実は税率がいくらであっても、企業の付加価値は変わらない。

 ただし、消費税は消費地課税主義になっているので、輸出の場合には、日本の消費税としては、企業が受け取る消費税はゼロとなって、企業が仕入れ時に払った消費税が還付されることとなる。

 しかし、企業は、受け取った消費税分から支払った消費税分を引いた金額を納税(マイナスになれば還付)するため、還付されたからといって収益に変化はない。

 というわけで、輸出に対して輸出企業に恩恵を与えているわけでない。国としても、輸出で消費税を還付したとしても、輸入では逆にたっぷり消費税を課せるわけなので、国内の消費を課税ベースとする消費税では損も得もないわけだ。

 この「戻し税は大企業の恩恵」という詭弁(きべん)を使う人は、大企業だけが恩恵を受けているかのようにいうが、これは輸出企業すべてについて適用されており、大企業だけのものでない。

 このように、消費税の仕組みからは、戻し税の欠陥は出てこない。このため、「大企業が下請けの中小企業に負担を押しつけている」という話が付いてくるのだろう。しかし、下請けいじめの問題は輸出関連に限らず、どのような取引にもありえる。独禁法などによる不公正取引規制で対処すべきもので、消費税の問題ではない。

 共産党もさすがに、「輸出戻し税の問題は、消費税の還付制度そのものにあるのではなく、大企業が下請けに消費税分の単価引き下げを押し付けていることにある」と、輸出戻し税が消費税の問題でないことを認めている。

 筆者は、消費税増税についてさまざまな問題点を指摘しているが、輸出戻し税のような「言いがかり」を唱えたことはない。こうした馬鹿げた議論は、真面目な消費税問題の議論に対して障害ですらあるので、言うべきではない。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

 

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