GWの飛騨群発地震で焼岳噴火の可能性も

2014.05.16


5月3日以降、群発地震が続いている焼岳【拡大】

 さる5月3日の朝から岐阜県と長野県の県境で群発地震が続いている。最初の日に岐阜県高山で震度3の揺れを9回も記録するなど、有感地震だけで41回もあった。高山市で民家2軒の石垣が崩れるなど小被害があった。

 地震は最初は多かったが、その後減っていまは数日に1度ほどになっている。最大の地震のマグニチュード(M)は4・5だった。

 気象庁の発表だと震源は「岐阜県飛騨地方」と「長野県中部」に分かれていて、まるで別のところで地震が起きているように見える。だがこれは震源の計算結果のばらつきが、たまたま県境を越えただけなので、ひとつながりの群発地震なのだ。

 この地震群は焼岳(やけだけ、標高2455メートル)の直下に集中している。震源の深さは地下5キロ以内で、ごく浅い。

 焼岳は県境にある活火山で、南北に連なる飛騨山脈のひとつの山だ。

 地震は「オレが火山性地震だよ」と言って起きるわけではない。このため地球物理学者は起きた場所で判断するしかない。今回の群発地震は火山の直下で起きたので火山性地震の疑いが強い。

 火山性の地震には、どこにでも起きる普通の地震と記録上は区別がつかないものが多い。

 そのほか「火山性脈動」や「低周波地震」もある。火山性脈動は噴火の直前に出ることが多い。今回は火山性脈動や低周波地震は観測されていない。

 じつは、この付近では過去たびたび群発地震が起きている。1998年にはもっと規模の大きな群発地震が起きた。最大地震はM5・4だった。その前にも93年や90年にも起きた。

 近年は群発地震が起きても噴火には結びつかないことも多かった。しかし焼岳は過去に大噴火したことも何度もある。たとえば15(大正4)年の噴火では大量の泥流が長野県・上高地にあった川をせき止めてしまった。水中に立ち枯れた木が景観を作って観光客に人気の大正池は、こうしてできた。

 焼岳の現在までの最後の噴火は62年。旧焼岳小屋が火山灰で押しつぶされて4人が負傷した。

 以後、群発地震はあっても噴火はない。だが半世紀の休止は火山ではよくあることで、これからも噴火しないことはあり得ない。いずれ群発地震から噴火への道をたどることになろう。

 噴火こそしなくても、焼岳の地下にあるマグマ関連の事件が起きたことがある。95年のことだ。近くでトンネル工事をしていたときに火山性ガスを含む水蒸気爆発があって工事の作業員ら4人が犠牲になった。中部縦貫自動車道の安房トンネルの工事の取り付け道路の工事だった。

 また土砂崩れや雪崩も発生、梓川になだれ込んだ土砂は6000立方メートルにもなった。そしてトンネルの出口はもともと予定されていたところから変更された。

 いまでも焼岳の山頂付近には有毒ガスが出続けている。地下のマグマはまだ生きているのである。

 ■島村英紀(しまむら・ひでき) 武蔵野学院大学特任教授。1941年、東京都出身。東大理学部卒、東大大学院修了。理学博士。東大理学部助手を経て、北海道大教授、北大地震火山研究観測センター長、国立極地研究所所長などを歴任。『直下型地震 どう備えるか』(花伝社)など著書多数。

 

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