「デフレボケ」の日本メディア 成長率が長期金利を上回ることは異例ではない

2014.05.30

 日本と米国、ドイツで名目経済成長率が長期金利を上回ったと報じられている。「財政再建には追い風だが、資産バブルにつながった例が目立つ」との論評もあるが、名目成長率が長期金利を上回っている背景は何だろうか。

 はじめに指摘しておきたいのが、長期金利とは何かである。こうした報道では、はっきり書いていないことが多いが、データを見る限り、名目長期国債金利だ。長期金利とは10年物の金利を指すことが多い。

 「バブル」という言葉も曖昧だ。日本の1988〜90年は資産価格上昇とその後の急落から見て疑いないが、米国でITバブルとされている98〜2000年は、単に景気が良かっただけともみられる。バブルという言葉を安易に使いすぎるのは、日本のマスコミだけだ。

 先進国のデータを見てみよう。2000年代以降のOECD(経済協力開発機構)諸国で年次の長期金利と成長率を容易に入手できる419のケースについて、国の数でみると、長期金利が成長率を上回ったのは192(46%)、逆に長期金利が成長率を下回ったのが227(54%)だった。

 時期についてみると、リーマン・ショックの前には経済好調を反映して長期金利が成長率を下回り、リーマン・ショック後は名目成長の落ち込みによって長期金利が成長率を上回る国が多い。結果として、2000年代以降、長期金利と成長率は、どちらが上回るかは、ほぼ五分五分という状況だ。

 理論的にいっても、長期金利と成長率の関係は、どちらが上回るかはわからない。たしかに、成長率が長期金利を上回る状態が長く続けば、財政再建は楽になるだろう。その一方で資産バブルの可能性も出てくるというのだが、そうした状況は長く続かないというのが、データからもわかる。

 もっとも、長期金利の指標を国債金利より高い民間貸出金利とすれば、これが成長率を上回る公算が大きい。というのは、もし、民間貸出金利が成長率より低い場合、カネを借りて事業を行えば成長する確率が高いので、みんなが事業のためにカネを借りるはずで、そうなれば金利が上昇するからだ。

 報道では、「成長率が長期金利を上回るのは異例」とも書かれているが、これは前出のデータで見るように誤っている。多くのマスコミは自分でデータを確認できず、わずかな国のデータのみを渡されて記事を書くからだ。日本と米国、ドイツだけのデータであり、このうち日本はデフレのため名目成長率がゼロかマイナスとなることが多かった。一方で、長期金利は低くなってもマイナスにはならないので、成長率が長期金利を上回っていたのは当然である。

 逆にいえば、デフレから脱却すれば、長期金利が成長率を上回るのは、世界ではまったく不思議でない。

 そうしたありふれた現象でも、日本のマスコミは「バブルの足音か」という見出しになることが、ここ20年間で「デフレボケ」した状況をよく表しているのではないか。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

 

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