岩田日銀副総裁の本音を読む 財政政策求めるメッセージか

2014.05.31

 日銀の岩田規久男副総裁は26日に講演を行い、昨年4月の量的緩和策導入後に進んだ物価上昇について、市場の一部にある「円安による輸入物価上昇を原因とするコスト・プッシュ型の悪い物価上昇」とする見方を否定、緩和策などが需要を底上げした「デマンド・プル型」の上昇だとした。

 一方、潜在成長率の引き上げについて、「日銀の金融緩和による設備投資増があるので、供給力の向上に一定の貢献はできるものの、政府による規制緩和がないと日銀の貢献も少なくなってしまう」として、政府による成長戦略への取り組みに期待した。この講演で岩田副総裁の本音はどこにあるだろうか。

 岩田副総裁の講演は、教科書にも出てくるような基本的なフレームワークであり、明快だ。コスト・プッシュとデマンド・プルの違いは、総供給と総需要を使って説明できる。

 コスト・プッシュは総供給が上にシフトすることだが、その結果、物価が上昇し、実質国内総生産(GDP)が減少する。一方、デマンド・プルは総需要が上にシフトするので、物価は同じく上昇するが、実質GDPも増加する。

 つまり、実質GDPの動きを見ていると、コスト・プッシュかデマンド・プルかは判別できる。実質GDPの動きは、就業者数や失業率ともリンクしているので、就業者数か失業率の動きを見てもいい。その結果は明らかだ。日銀の金融緩和以降、実質GDPは増加し、就業者数も増加(失業率は低下)した。

 市場関係者の多くが、コスト・プッシュとデマンド・プルを区別できないのは、彼らはまともに経済学を勉強したことがないからだ。コスト・プッシュとデマンド・プルを説明したハウツー本をみると、コスト・プッシュのほうが理解しやすいと書かれていることが多い。

 実は、コスト・プッシュよりデマンド・プルのほうが頻繁に見られる現象だが、サラリーマン向けのハウツー本が総供給と総需要という経済学で考えていないことがよくわかる。

 岩田副総裁は、なぜデマンド・プルを強調したのだろうか。日銀はこれまで需要を喚起して、頑張ってきたのは事実だ。しかし、今後は潜在成長力、つまり供給を上げていかなければ、金融政策でも限界が来る。そのために、政府の規制緩和の取り組みが重要だというのは、一般論としては否定できない。

 もちろん、岩田副総裁はそうも主張したかったのだろうが、4月からの消費税増税による需要の減少についても言いたいことがあったのではないか。つまり、2013年度は、日銀はデマンド・プルになるようにやってきたし、政府も有効需要創出に頑張った。しかし、今14年度、日銀は引き続き頑張っているが、政府の消費税増税によって需要減になっている。

 副総裁の立場では消費税のことを言いにくい。そこで、デマンド・プルを持ち出し、消費税増税でマイナス効果になれば、政府に財政政策で需要を補ってほしいというメッセージではないか。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

 

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