ECB「初めてのマイナス金利」 日銀の量的緩和よりも効果薄

2014.06.12

 欧州中央銀行(ECB)は、追加緩和策の中で、民間銀行のECBへの預金について、利息を支払うのではなく0・1%の手数料をもらうことを決めた。いわゆるマイナス金利である。

 ECBとして「初めて」のこの措置に、マスコミ報道は「初めて」だけに反応し、本質を語れない。

 まず、マクロ経済政策を概観してみよう。経済が苦境の時に、金融・財政政策を発動する理由は、両政策ともに有効需要を創出するからだ。財政政策は、政府部門が公共事業などによって直接有効需要を作るのでわかりやすい。

 一方、金融政策は民間部門で消費や投資等の有効需要を作るために、「実質金利」(=名目金利マイナス予想インフレ率)を下げる。通常であれば、名目金利を下げれば、実質金利も下がる。ところが、名目金利がゼロになると、この手は使えなくなる。そこで、マネタリーベース(中央銀行が供給する通貨)を増やし、それが予想インフレ率を引き上げ、実質金利は下がる。ここでは、名目金利を上がらないような方法をとればいい。

 こうしたことから、名目金利がゼロの場合、「政府紙幣発行+財政出動」がもっともパワフルな政策になる。

 この「政府紙幣発行」の部分を「量的緩和」と置き換えても、中央銀行券と政府紙幣は完全に代替なので、金融政策についてみれば、両者は同じ効果だ。量的緩和は、国債買いオペを伴うので、明示的に名目金利の上昇を抑え実質金利をマイナスにして、民間部門の有効需要を創出できる。

 名目金利もマイナスにできれば実質金利は下がる。となると、今回のECBの措置は、名目金利をマイナスにするので、理論的には量的緩和と同じ効果を持つ。

 もっとも、理論的には同じでも、量的緩和と名目金利マイナスのどちらがよりマイナス実質金利が作れるかといえば、量的緩和のほうがはるかに強力なマイナス実質金利を実現できる。

 例えば、黒田日銀の量的緩和では、実質金利はマイナス0・5%からマイナス2・5%にもなり、下げ幅は2%である。一方、今回のECBでは名目金利ゼロを名目金利マイナス0・1%にしただけで、実質金利の下げ幅はたった0・1%しかない。

 なぜ、ECBが量的緩和でなく名目金利マイナスを選択したかといえば、量的緩和は国債の買い取りを伴うので、EU(欧州連合)のどこの国の国債を買うかでもめるからだ。これが各国寄せ集めのECBの政治的な弱点だ。これを隠すために、表向きECBは財政ファイナンスをしないとの方便をとっている。

 量的緩和は、各国国債でなく債券の購入でもできる。欧州投資銀行(EIB)が発行した債券でもいい。EIBが大量に債券発行し、ギリシャなどの周辺国でインフラ整備を行うという財政政策を発動、同時にECBがそのEIBが発行した債券を購入し、量的緩和する。これが今EUに求められている金融・財政政策だ。これは今の仕組みの下で可能なベスト政策だ。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

 

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