食料自給率「39%」のカラクリ 国際標準でないカロリーベース

2014.08.09

 農林水産省は5日、2013年度のカロリーベースの食料自給率が4年連続で39%になったと発表した。先進国の中で、日本の自給率は最低水準とのことだが、自給率を引き上げることがはたして必要なのだろうか。

 まず農水省のいう「食料自給率」という概念自体に問題がある。政策目標となっているのはカロリーベースの自給率であるが、これは国際的に標準的なものとはいえない。

 実は各国とも、カロリーベースの自給率など政府として算出していないのだ。農水省の資料には国際比較があるが、その注を読むと「農林水産省で試算した」と書かれており、各国の公式な統計資料ではない。

 このように日本独自のカロリーベースの自給率について、日本が4割という情報を与えられると、多くの人は日本の自給率に心配を抱き、高めたい気分になる。この4割という数字は絶望的になるくらいに低い数字ではないが、半分の5割に満たないので高めようとする向上心を生み出す影響があり、心理的には絶妙な数字だ。

 ちなみに、生産額ベースで自給率を算出すると68%。この数字だと、食料自給率はまだ7割と高いので安心する人が多いだろう。

 食料自給率にはこうした問題点があるために、政策目標として不適当であるという意見は、これまで農水省以外の政府内にもあった。

 自給率は消費の変化により数値が変化するものであり、政策目標として達成するには、行政が国民の食生活に積極的に介入し国民の消費行動をコントロールする必要があるので不適切であるとか、食生活の内容次第で大きく変わるものなので、国内生産力を示すものとして不適切であるなどの点も指摘されている。

 常識的に考えても、今は飽食の時代であり、それを前提にした自給率にあまり意味があるとも思えない。

 食糧安全保障ということもいわれるが、食糧危機は他のエネルギー危機と比べて起こりにくくなっている。食糧危機については、しばしば経済学者マルサスの人口論が引用される。人口は等比級数的に増えるが、食糧生産は等差級数的にしか増えず、食糧危機は必然になるというものだ。

 もっとも、これまでのところ、食糧生産も人口に見合っただけ伸びてきており、一部の国を除くと世界的な食糧危機にはなっていない。

 もちろん、今後食糧危機があり得ないとは断言できないが、それよりも自給率4%に過ぎないエネルギーのほうが問題であろう。エネルギーは、日本の農業生産にも不可欠であることに加え、食糧問題より国際紛争に巻き込まれやすいからだ。

 なぜ、農林水産省が食料自給率に固執するかといえば、「わかりやすい」(だましやすい?)指標として予算獲得のための方便として有効だったからだ。食糧安全保障の観点からいえば、自給率向上より供給力の維持が重要であり、また、食糧備蓄や輸入元の分散、先物市場や長期契約の活用などの具体策を行うほうが有意義である。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

 

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