【忘れない、立ち止まらない】高校生の素直な意見を押さえつけた大人の野次

2014.09.11


防災や古里について、自ら考え、行動する生徒たち。大人は彼らの情熱に応えられているのか(東海新報社提供)【拡大】

★(3)

 「復興を担う世代」という言葉が、被災地の若者にはしばしば向けられる。

 事実、子供たちが古里へ強い思い入れを持っていることに、日々の取材の中でいつも驚かされる。今の自分にできるだけのことをしようと考え、行動に移す児童生徒がどれほど多いか、それがいかに頼もしいことであるかは筆舌に尽くしがたい。

 ただ、その情熱に報い、活躍できる“場”を整えることは大人として最低限の責務だと思っている。まして、彼らの気持ちをくじくようなことは決してあってはならないと。

 宮城県の地域紙に次のような投稿が載っていた。230億円を投じる巨大防潮堤建設に関する、住民への最終説明会のときのことだという。

 「費用対効果や代替案を少しでも言おうものなら、その最中にやじが飛ぶ。4人の高校生が参加して、そのうち1人が意見を述べた。(中略)推進派らしき人からやじが飛んだ。その言葉に圧倒された高校生は、それ以上しゃべることをやめた」「よほど悔しかったのだろう、背中が泣いて見えた」「会場には県職員はもちろん、市職員や県・市議会議員も同席していた。しかし、誰も注意する人はいなかった」−。

 思わず目を疑った。やじで意見を押さえつけること自体が恥ずべき愚劣な行為である。それを、普段、「これからの若者に期待する」ようなことを言っている公職者たちがいさめもしないとは。開いた口が塞がらなかった。

 また、岩手出身の男性は、母校の高校で生徒と懇談した際、こんな話が出たと教えてくれた。

 ある研究グループが1つの地域に密着し「新しいまちづくり」を検討する会を開いている。その場に「地元の若者の意見も聞きたい」と高校生たちが呼ばれたそうだ。

 彼らは率直な考えを述べた。「市の示す復興計画とその案はかみ合っていないのではないか」「自分たちはこういう町が必要だと考えている」と。すると研究者は「せっかくこの地域のために頑張っているのに、水を差すようなことは言わないでほしい」と答えたのだという。

 大人たちのずさんな対応に憤り失望した生徒たちは、客観的な意見を求めて男性に現状を訴えたのだった。「聞く気がないならなぜ呼んだのか。僕ら地元の人間が、自分の理想を語ることさえできないのか」

 彼らが大人になり力をつけたときに活躍するための素地は、まさに今つくられていなければならない。期待させておいて裏切られれば、社会に対して不信を募らせるばかりになるだろう。自分たちの意見に耳を傾けてもらえる、理想はかなえられるということを現段階で示せずして、どうして彼らに「未来は明るい」などといえようか。

 ■鈴木英里(すずき・えり) 1979年、岩手県生まれ。立教大卒。東京の出版社勤務ののち、2007年、大船渡市・陸前高田市・住田町を販売エリアとする地域紙「東海新報」社に入社。現在は記者として、被害の甚大だった陸前高田市を担当する。

 

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