先日、週刊誌の「80歳以上の有名人に聞いた葬儀の考え」という特集を読んで、考えさせられた。多くの人は「葬儀は簡素に」「家族だけで質素に」と望んでいた。「葬儀はしない」という方も少なからずいた。私も今年80歳。同窓生の多くは亡くなっている。そんな状況で葬儀をして、意味があるのだろうか。
この特集を読んだ後、娘と息子に「私の葬儀はどうする?」と尋ねると「大きくはしないけど、お世話になった方にお知らせしたい」と言う。
「どうしようか?」と迷っているとき、「ダイエーの屋号が消える」という報道に接した。小売業トップだったダイエーは、阪神・淡路大震災で痛手を負い、経営多角化の失敗などもあって、産業再生機構の支援を経て、昨年からイオンの子会社となった。そして、2018年度には店舗名が消えるという。創業者の故中内功さんも無念なことと思う。
裸一貫から一代で会社を大きくした者同士、12歳先輩の中内さんにはかわいがられ、ダイエーの会長室にはよくお邪魔した。「ダイエー・ホークス(現ソフトバンク球団)を強くする方法はないか?」と相談され、西武などの監督を歴任した広岡達朗さんを紹介したこともあった。
中内さんがダイエーを創業したのは1957年。私はその前年、22歳で麻布小型自動車を設立して商売を発展させ、63年に社名を麻布自動車に変えた。ダイエーの名が消えると知って、私は以前から漠然と考えていたプランを実行に移そうと考えた。
麻布自動車の名を孫の代に残そうというものだ。
といっても、バブル経済崩壊で、金融機関に対する麻布自動車(78年に麻布建物と社名変更)の債務は整理回収機構に譲渡され、会社も整理された。ハワイのホテルも栃木のゴルフ場も持っていかれ、1兆円といわれた資産はすべてなくなっている。