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「イスラム国」による日本人殺害脅迫事件は、不幸なことに湯川遥菜さんと、ジャーナリストの後藤健二さんが犠牲になる結果となった。心からご冥福をお祈りしたい。
これについて、残忍非道なテロリストを非難するより、安倍晋三首相を批判する声が聞かれる。安倍首相が中東諸国への人道支援を行うとした演説が、虐殺の引き金になったというものだ。一部のマスコミや野党による政権攻撃の材料になっている。
ただし、この安倍首相を批判する動きは、以前からそれとなく表れていた。湯川さんの虐殺映像が流れ、後藤さんの安否が心配されたころから顕著になったように思われる。私は、首相官邸前で、後藤さんの解放を安倍首相に要求する「デモ」の報道を見ていて、違和感を覚えた。
朝日新聞は1月26日朝刊以降、官邸前で前日に行われたデモをカラー写真付きで何度か紹介した。この中で、同月25日のデモを呼びかけたのは、「許すな! 憲法改悪・市民連絡会」の事務局の人物とあった。
つまり、この人物は「後藤さんの命を助けたい」という思いは当然あったのだろうが、もともとは安倍首相が視野に入れている「憲法改正」に反対するという、政治的目的を持っていたのだ。
現に、朝日の写真には、後藤さん救出とは直接関係のない、「憲法守れ」というメッセージボードも映っていた。
今回の事件によって、護憲派がいう「平和国家」の根拠たる、日本国憲法は完全に破綻した。現実の国際社会が、憲法前文にある「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して」という性善説では、とても対応できない時代に突入していることが明らかになった。
イスラム国は、日本人人質の解放条件をコロコロ変えて、無残にも虐殺しただけでなく、「世界中どこでも日本人を殺す」「日本にとっての悪夢を始めよう」と恫喝している。ヨルダン空軍パイロットを早々に焼き殺しながら、卑劣にも交渉材料にしていた。そんな相手を信頼などできるわけがないからである。