昨年5月に内閣人事局が発足して約1年が経過しようとしている。当時、安倍晋三首相は「行政のタテ割りは完全に払拭される」と宣言した。省庁の縦割りを打破し、官邸主導で進めるという狙いはどうなったのだろうか。
内閣人事局の初代局長ポストをめぐっても、ひと波乱があったのは記憶に新しい。当初内定したといわれていたのが警察庁出身の杉田和博官房副長官(1966年入庁)だったが、直前に撤回され、同じく官房副長官で政務担当の加藤勝信氏(旧大蔵省出身)となったのだ。官房副長官は、官僚の世界では最高ポストなので、出だしから、官邸主導、政治主導を強烈に印象付けた。
この人事を行ったのは、菅義偉官房長官といわれている。これで、菅官房長官に対して官僚は従順になったはずで、その後、官僚は菅氏の剛腕を恐れるようになった。そうなってくると、官房長官には良質な情報が集まるようになって、さらにすごみが増している。菅官房長官は以前から情報収集能力に定評があったが、今では歴代官房長官の中でも屈指の力である。
内閣人事局は、国家公務員の人事管理に関する戦略的中枢機能を担う組織として、関連する制度の企画立案、方針決定、運用を一体的に担っており、具体的には、(1)国家公務員の人事行政として人事管理に関する総合調整(2)国の行政組織として機構・定員管理や級別定数等に関する事務、そして(3)幹部職員人事の一元管理を行う。
特に、目玉は(3)で、これまで各省において官僚主導で行われてきた幹部の人事権を一元化し、官邸主導で審議官級以上、約600人の人事を決定することになった。官邸は幹部官僚の生殺与奪の権を握ることになり、政権運営において大きなパワーだ。