建設計画が白紙に戻った新国立競技場について、猪瀬直樹前都知事は東京五輪の開催が決まった2013年9月の1カ月後には、当初1300億円だった総工費が3000億円に化けたと語っていた。
一方、東京五輪・パラリンピック組織委の森喜朗会長は、この期に及んで、「国がたった2500億円も出せなかったのかね」と恨み節。
政府は新たな計画で、基本設計段階の1600億円前後ならOKと考えている。それでも当初の予定より300億円アップだが、300億なんてたいした額じゃないと思っている。すでに国内外の設計事務所などと60億円近い契約が結ばれ、大半が支払い済みなのに、どこ吹く風。税金、つまり人のカネだからだ。打ち出の小づちという感覚。
結局、政治家も文部科学省の役人も、日本スポーツ振興センター(JSC)も、頭の中でバブル経済が続いているということ。神経がマヒしている。私も似た経験をしているから、何となくわかる。
−−1980年代後期のバブル時代、わが麻布自動車グループはアラモアナ・ホテルなどハワイの6つのホテルを買収した。最後に所有したハイアット・リージェンシー・ワイキキは40階建てツインタワーの名門ホテルで、さすがに2億6500万ドル(当時の1ドル120円で約320億円)と、これまでに比べてケタ違いの価格だった。
しかし、私は「買った!」と即決した。300億円と提示されても、「あ、そう。そのくらい、何とかなるだろ」という感覚。カネがなくても何とも思わなかった。実際、帰国後、どこの銀行も「ウチで借りてください」と先を争ってやってきた。