稲川会はどうなるのか。別の捜査関係者は「住吉会と違って稲川会は山口組3代目組長時代から友好関係にある。現在の稲川会ナンバー2は山口組の主流派となった弘道会幹部とも兄弟分にあり、稲川会は、山口組につくとの見方が大半だ。ただ、稲川会は4年前に傘下組織が内紛で分裂しており、分裂組織や山健組に近いとされる組織が脱退組に流れる可能性も捨てきれない」と指摘する。
山口組の分裂騒動は大きな衝撃を与えたが、山口組関係者によると、分裂の可能性がささやかれ始めたのは8月初旬。同時期に行われた組行事に騒動の中心にいる山健組や宅見組のトップらが欠席したことから「組が割れるかもしれない」との情報が出回ったという。当初は事態の収拾を楽観視する声が多かったものの、空気が一変したのは、8月中旬ごろのことだった。
「『割れるかもしれない』から『割れる』という話に変わった。同時に、幹部から『敵対組織の関係先には近づくな』というお触れも出たことで緊張感が一気に高まった」(山口組関係者)
すでに一部の団体が「銃撃対策として組事務所に鉄板を設置するなど、抗争に備える動きもみられる」(同)といい、一触即発のムードも漂い始めている。
神戸に本拠を置く山健組と名古屋で勢力を張る弘道会との対立の構図が鮮明となった山口組の内紛劇。捜査関係者は関西だけでなく、首都圏での影響は避けられないとみている。
捜査幹部は「都内には弘道会や山健組傘下の3次団体や4次団体が多く進出している。シマが近接している組織も多い。小競り合いはあちこちで起きるはずだ。他組織も巻き込み、名古屋vs神戸の代理戦争に発展する可能性もある」と動向を注視している。