会社に届いた封筒の中身(4) 送り主の卑劣な正体は

★会社に届いた封筒の中身(4)

2016.03.11

 本田誠(42)=仮名=は、「電車内で痴漢をしている」という内容の手紙を勤務先の会社に送りつけられ、役員らに呼び出されていた。

 「もちろん会社はこんな奴に金を払う気はない」

 手紙の主は、社員が痴漢をしていたという事実を世間に公表されたくなければ、金を出せと要求していた。

 「しかし、警察に通報すれば、痴漢の件も世間に知られてしまう」

 「ちょっと待ってください! 私は痴漢などしていません」

 役員たちはまるで誠が痴漢をしたと信じているようだった。

 表情を変えない役員たちに何とか無実を証明しようと必死で言葉を考えていると気がついた。

 写真の中で自分の手が触っているように見えるダークグレーのパンツスーツには見覚えがある。

 誠は会議室の電話を借りると内線をかけた。

 「失礼します」

 会議室に入ってきた佐東ゆかり(31)=同=は、役員が顔をそろえる光景に驚いたようだった。

 「この写真の女性は君なのかい?」

 役員に確認を求められたゆかりは写真を見ると、すぐにうなずいた。

 「はい、そうです。この日、たまたま駅で本田さんと一緒になったんです」

 ゆかりの言葉を聞いてやっと会議室の空気が緩む。最悪の場合、ここで自分の解雇を決めるつもりだったのだろう。

 「だとすれば痴漢ハンターってやつですね」

 法務部長がため息混じりに呟く。

 「電車で痴漢をしている男を見つけて、金をゆすろうとするんです」

 自分はそんな奴らに狙われたというのだろうか。今回はゆかりが無実を証明してくれたからよかったものの、写真の女性が見ず知らずの他人だったらどうしようもない。

 「君も誤解を招くような行動は慎んでくれよ」

 部長からの苦言を受けて会議室を後にする。無実は証明されたが、自分に対する役員たちの心象は悪くなっただろう。

 「男性専用車両を作ってもらわないとな」

 誠が会議室に拘束されていた間に、外はすっかり暗くなっていた。 =この項おわり

 (6線ストライプ制作/北川兼義)

 

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