【現地ルポ 仰天大陸中国】高学歴で都市を彷徨う「蟻族」が社会問題 大卒でも「単純作業」や「風俗嬢」

2013.08.30

 6月に中国全土で行われた大学の共通試験「高考(ガオカオ)」の受験者は912万人で、昨年から3万人減って5年連続の減少となった。

 大学進学を志望する若者が減っている背景には、大卒資格に対する絶望感がある。中国ではここ数年、大卒者でありながらまともな報酬が得られる仕事に恵まれず、都市部の狭いアパートに同居生活をする「蟻族(ありぞく)」が社会問題となっている。

 大学進学率が25%程度と、日本の半分ほどの中国では、彼らは立派な高学歴ワーキングプアだ。

 こんな出来事もあった。昨年10月、黒竜江省哈爾浜(ハルビン)市が、清掃担当者を募集したところ、457人の募集枠に1万1539人もの応募が殺到。しかも、実際に履歴書を提出した7186人のうち、4割以上が大卒者で、大学院修了者も29人含まれていた。

 学歴があっても食えない現実を浮き彫りにしている。

 広東省の日系工場で、求職者の面接を担当している日本の男性駐在員(42)は、蟻族現象の背景として、「大学定員の急増」を挙げる。

 政府はこの10年ほどで、大学定員を約5倍に増加させた。一方、受け皿となる第3次産業の雇用は増えていない。

 そこでホワイトカラーとブルーカラーの賃金逆転現象が起きた。

 駐在員の話では、広東省では、工員の賃金相場は月収3000元(約4万8000円)と、ここ5年間で倍ほどに増えている一方、事務職や営業職の賃金の変動はほとんどなく、その3分の2程度でもいくらでも募集があるという。

 「5、6年前まではうちに来るのは小学校も出ていない農民工ばかりだった。それが最近では半数以上が大卒。うちの生産ラインには法律専攻の院卒の若者がいますが、ひたすらネジの本数をチェックする単純作業を担当しています」(駐在員)

 こうした学歴と職業のミスマッチは、夜の世界にまで及んでいる。

 別の日系企業駐在員(33)の話によると、上海市の性風俗店に行ったところ、英語ペラペラの女の子がいたそうだ。

 彼女は米国の大学を卒業したのち、現地で働いていたが、就労ビザの更新ができずに帰国。その後、風俗嬢として働きはじめた。自身の身の上を語った上で、「英語を使っても大した稼ぎにならない」と漏らしていたという。

 中国では毎年約700万人前後が大学を卒業しているが、彼らの内定率は3割程度にとどまっている。蟻族と呼ばれて都市を漂流する若者は、今後も増え続ける見込みだ。

 ■奥窪優木(おくくぼ・ゆうき) 1980年、愛媛県生まれ。上智大経済学部卒。2004年に渡米し、出版社・新聞社勤務を経てフリーライターに。07年から中国・広州で取材活動を開始し、08年に帰国。中国の社会問題を週刊誌・月刊誌などで執筆している。著書に『週刊SPA!』誌上での連載「中華人民毒報」をまとめた『中華バカ事件簿』(扶桑社)などがある。

 

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