先月26日、中国新華通信社傘下の『経済参考報』が中国の金融事情に関する記事を掲載した。金融市場で大きなシェアを占める「信託商品」が今年返済期のピークに達し、約5兆元(約82兆円)程度の貸し出しが返済期限を迎えることになるという。
ここでいう「信託商品」とは、正規の金融機関以外の信託会社が個人から資金を預かって企業や開発プロジェクトに投資するものである。高い利回りと引き換えに元金の保証がまったくない、リスクの高い金融商品だ。中国の悪名高いシャドーバンキング(影の銀行)の中核的存在がまさにこれである。
問題は、返済期を迎えるこの5兆元規模の信託投資がちゃんと返ってくるかどうかである。申銀万国証券研究所という国内大手研究機関が出した数字では、全国の信託投資の約52%が不動産開発業に投じられているという。実はそれこそが、信託投資自体だけでなく、中国経済全体にとっての致命傷となる問題なのである。
というのも、まさに今年の2月あたりから、中国における不動産バブルの崩壊が本格化しているからだ。
不動産価格の暴落は2月半ばから浙江省の中心都市の杭州で始まった。同18日、「北海公園」という新築分譲物件が当初の予定価格より3割近く値下げして売り出された。翌19日、前月から分譲中の「天鴻香謝里」と名付けられた不動産物件も突如、当初の販売価格よりも1平方メートルあたり4千元の値下げを敢行した。
そして3月10日、大都会の南京で2つの不動産物件が25%程度の値下げとなった。同21日、江蘇省常州市のある分譲物件が販売の途中で大幅に値下げした結果、値下げ以前に購入した人々が販売センターに乱入して打ち壊しを行った。同23日には同じ江蘇省の無錫市で同じ理由による「打ち壊し事件」が起きた。